野村監督と親しい記者はいきなりこう言った。「野村監督はユニホームを脱ぐ気持ちなどさらさらない。最近は足元がグラつくなど危なっかしいところもあるが、どうしてどうして、できることなら100歳まで監督をやりたいと思っていますよ」
“生涯一捕手”がキャッチフレーズだった野村監督は、どうやら“生涯一監督”と看板を塗り替えたらしい。楽天監督は今季限り、というのは既成事実で、楽天のフロントは後任監督を捜していた。これは野村監督にとって気にくわないことであって、開幕して間もないころから“続投作戦”に出た。
「(楽天の)フロントな、勝ってもろくに喜んでもくれんし、握手もしてこんのだよ」
野村監督はそうはっきり口にし、それがテレビなどで全国に流れた。今季の楽天は開幕から調子がよく、首位に立ったこともある。その好成績をタテに野村一流の口撃に出た。
「野村監督の試合後のコメントはテレビのスポーツニュースの目玉。視聴者はあのしゃべりを楽しんでいる。野村はそのことを承知してことさらマスコミの喜びそうなことを言う」(楽天担当記者)
テレビの出演数が監督の中でダントツである。試合があろうとなかろうと、積極的に出演し言いたいことを言っている。スポーツ紙の1面を飾ることも多い。関係者の話によると、これは参謀役の女房・サッチーの作戦だというのだ。
「サッチーはしたたかです。野村の人気を知っているから、それを最大限に利用しようというやり方です。楽天とすれば、これだけ人気のある人材はほかにいないし、退団させた場合、ファンの批判を浴びるのは目に見えており、親会社の本業にも影響することも必至とみて、方向転換するようです」(テレビ関係者)
球界関係者の間では「マスコミが騒いでいることもあるが、野村は来年、横浜監督になる」との情報が流れている。その根拠として「横浜を運営するTBSへの出演が多い」。つまり来季の約束ができている、ということのようである。
「知っての通り、楽天とTBSの戦いは有名です。楽天のTBSへの経営参加は成功しなかったのだが、両者はまさに敵同士。そこを野村監督はうまく利用したのでは…。人気者のオレを切ったらライバルのところに行くぞ、とね」(事情通)
6月に入って野村監督の楽天に対する“嫌みコメント”が減った。これは楽天が野村監督に来季の続投を要請したのではないか、との根拠となっている。まして、先ごろ三木谷オーナーが珍しく観戦に訪れ、試合前に野村監督と握手するシーンがマスコミに報じられた。
「続投なら野村のシナリオ通りでしょう。新しい契約になるから、横浜監督をちらつかせて高額契約を得る可能性は大です」(楽天担当記者)
新興球団の楽天を手玉に取るくらい、老かいな野村監督にとっては朝飯前のことなのだろう。しっかりごちそうになるという構図が出来上がりつつある。