その11日の告発会見以降、他球団のフロント要人、コミッショナー事務局員、巨人OBを含むプロ野球解説者たちは清武GMの発言に一定の理解を示しつつも、最後は「巨人内部のことなので…」と言葉を濁していた。要するに、清武GMの味方は1人も現れなかったのだ。渡辺恒雄・球団会長(85)は12日に発表した文書のなかで「今後の反省次第」と、同GMの処遇については“情状酌量の余地”も伝えていたが、
「渡辺会長の立場、性格からして、はらわたが煮えくり返っていたはずです。1週間も立ってから処分を下されたのは、周囲が諫めていたからです」(関係者)
との意見も多く聞かれた。
解雇処分までの1週間−−。そのキーマンは桃井オーナー兼社長のようである。
桃井オーナーは渡辺会長側に立った言動を続け、解雇処分の会見でも「チームの信用を傷つけた」と清武GMを非難していた。しかし、読売関係者の1人はこう証言する。
「渡辺会長、清武GMの衝突を露見させたコーチ人事ですが、岡崎郁ヘッドコーチを留任させる、江川卓氏を招聘するといった内容以前の問題なんです。清武GMと桃井オーナーは来季のコーチ人事の組閣表を持って、10月下旬に渡辺会長を訪ねたのは事実です。同会長は組閣が出来上がっていたことに腹を立てた部分もあるようです。会長はコーチ人選の話し合いに加われなかったことにも怒っていました。もっとも、意に沿わぬ名前があったようですが…」
この食い違いが、渡辺会長の「(コーチ人事は)俺は知らん!」発言に繋がり(4日)、清武GMの「渡辺会長に了承を求めた」(11日会見)の食い違いに繋がった。
興味深いのは、渡辺会長に組閣表を否定された直後の桃井オーナー、清武GMの反応だ。同関係者によれば、先に『辞意』と『内部批判』を口にしたのは、桃井オーナーの方だと言う。渡辺会長のお怒りがよほど激しかったのか、それとも、過去にも似たような衝突があったのか、桃井オーナーは同会長と別れた後、「オレ、もう辞める」とこぼしたそうだ。
「11日の清武会見から渡辺会長が反論文を発表する12日未明までの間、同会長を諫めたのは桃井オーナーです」(前出・同)
表向きは『渡辺派』でも、裏では事態の収拾に奔走していたようだ。オーナーとしての責任もあったようだが、関係者の証言通りだとすれば、清武GMの発言は桃井オーナーの本心でもあったわけだ…。
巨人OBのプロ野球解説者がこう続ける。
「昨年の巨人納会の席でした。堀内恒夫元監督が『巨人をダメにしたのはアンタのせいだ!』と清武さんに絡んだんです。清武さんが我慢し、他出席者が堀内元監督をなだめたのでそれ以上には発展しませんでしたが…」
清武GMが巨人代表職に着いたのは、堀内氏が監督を務めていた04年途中。パートナーシップは1年半ほど。堀内氏は翌05年で退団しているが、5年以上が経っても忘れることのできない“恨み”があったのだろうか。
清武GMが“敗北”に終わった理由は1つ。今回の告発会見後、追随するフロント職員、巨人OBが1人も現れなかったことだ。
「長嶋茂雄氏も清武さんの一連の発言を非難していました」(巨人OB)
解任が明らかになった日、前日の鶴岡一成捕手(34)に続いて、大村三郎外野手(35)もFA権を行使することが決まった。高橋信二捕手(32)に関しても、「巷間言われている補強の失敗(=巨人の敗因)に対し、リベンジしたい気持ちもあるようだが」(清武GM)と、微妙な様子…。鶴岡、大村、高橋信。1球団から3人のFA行使者が同時に出た場合、史上初となる。清武GMによって、移籍加入してきた選手ばかりなのは、単なる偶然か?
「ソフトバンクの杉内、広島の栗原など巨人が興味を示していた他球団のFA取得選手の反応も違ってきました。原監督も清武GMが進めていた今オフの外国人補強について全く知らされていません。清武さんの人柄? 即実行に移る人。それを独断と受け止める人もいれば、頼りに思う人もいました」(前出・プロ野球解説者)
独断。巨人フロントには「そのタイプが2人いた」ということか…。
善くも悪くも、近年の補強は同氏が一貫して窓口を務めてきた。巨人の内部崩壊は今オフのFA市場、ひいては球界全体にも大きな影響を与えそうだ。