それに対し、球界のご意見番・張本勲氏(79=野球評論家)が「アメリカのピッチャーは質が落ちたね。だらしがないね」と水をさす発言をし、大谷の快挙達成の翌日にも別選手がサイクル安打を達成したことに触れながら苦言を呈していた。
アメリカのピッチャーは、本当にレベルが落ちたのだろうか。
大谷の記録達成を許したレイズ投手は、ライアン・ヤーブローと2番手ハンター・ウッドの2人。左腕・ヤーブローは昨季、16勝を挙げた左腕だ。
「ヤーブローは今季28歳になりますが、16勝を挙げた昨季がメジャーデビューしたシーズンなんです。2014年のドラフト会議でマリナーズに指名され、マイナーで鍛えられて4年目にして、やっと素質が開花したピッチャーです。ストレートはさほど速くありません。変化球で打ち損じを誘う技巧派」(米国人ライター)
「4年目でようやく」という経歴を聞かされると、ご意見番の意見は間違っていなかったことになる。しかし、こんな声も聞かれた。
「メジャーデビューする直前の17年シーズンでした。3Aで26試合に登板し、13勝、159奪三振をマークしました。レイズの首脳陣が他球団への流出を恐れ、それを阻止したほどです」(前出・同)
まだ伸びしろのある投手として期待されているのは、間違いないようだ。
ヤーブローは大谷に打ち込まれ、敗戦投手になったが、この日は6イニングを投げて被安打5。つまり、ヤーブローの失点は“大谷絡み”だけだったのだ。初回の大谷の3ラン、そして、5回に大谷が三塁打を放った直後の出た4番・プホルスの2ランだけ。プホルスはアメリカン・リーグを代表するスラッガーだ。ヤーブローは大谷、プホルスの2人には打たれたが、先発投手として責任イニングを投げており、メジャーリーグの投手の質が落ちたわけではない。
もっとも、ご意見番は「だらしがない」ともおっしゃったので、勝負どころで、3番大谷、4番プホルスに打たれたことを指しての表現だとすれば間違ってはいないが、「アメリカのピッチャーは…」と評価するのは正しいとは言い切れない。素直に、大谷をもっと評価してあげてもいいのでは?
「昨季のヤーブローは主に救援で勝ち星が転がり込んできたんです。今年は先発も任され、真価が問われています。ここまで10試合に投げて5勝3敗です」
メジャーリーグ中継の解説も務めるプロ野球OBの言葉だ。
サイクル安打を達成した翌日、レイズが先発マウンドに送り込んだのは、ブレイク・スネルだ。スネルは昨季、サイ・ヤング賞に選ばれた左腕。防御率1点台は、2000年のペドロ・マルティネス以来となる快挙だった。その一流投手との対戦成績は1打数1安打、1四球。スネル攻略に貢献してみせた。
メジャーリーグの投打の成績を見ると、たしかに「打高投低」の傾向は否めない。しかし、大谷は好投手と対戦し、結果を残したのである。(スポーツライター・飯山満)