オーストラリアでの騎乗成績は6戦1勝にとどまった。無名の日本人騎手に、すぐに騎乗馬が集まるはずもないが、それは覚悟していたこと。「テリー・ケリー師という調教師のところで調教に乗って、レースにも乗せてもらった。いろいろな競馬を知ることはすごくいい経験だった」と晴れやかな表情で渡豪の感想を話してくれた。
「こちらでいうと皐月賞にあたるコーフィールドギニーに使うときは『乗りに来てくれないか』なんてことも言ってくれて」短期間だったが、人とのつながりができたことも大きな成果だったようだ。
高崎競馬所属だった水野騎手は2004年末の廃止に伴い、浦和競馬へ移籍した。北関東の重賞制覇数は38回を誇り、02年には北関東リーディングにも輝いている。それだけに、移籍当初は騎手層の厚い南関東で自らの成績に苦悩した日々もあった。
だが、移籍から2年。現在は浦和のトップジョッキーの一人として南関重賞でも常連になった。
「ファンに名前も浸透してきたと思うから、このタイミングで外の世界を見に行くことを決めた」
デビューから17年。南関でもそろそろベテランの域に入ってきたが、さらに上を目指す強い意志は今でも持ち続けている。若手に負けないくらいどん欲に、いろいろなものを吸収していこうとする強い瞳が、その端正なマスクを一層、凛々しく見せていた。