「叶えられることなら、体が2つ欲しい」。藤沢和師の偽りのない心境だろう。
10日の日曜日はフライングアップルが朝日杯FSへ、そしてダンスインザムードが「香港マイル」(GI 芝1600m)に出走する。師は後ろ髪を引かれる思いで、きょう6日、香港に出発する。
さて、フライングアップルだが、「ひと言でいって順調そのもの」と師。変わらないことが一番と強調する。今朝は芝コースで5F64秒8→50秒0→36秒7→12秒1。スタート時に2馬身先行させたタイキスピリッツ(古馬1000万)に4角で並びかけると、そのまま余力をもって併入。全身を使ったダイナミックなフォームで、馬場の外め八分どころを真一文字に伸びた。
「中2週だけど、雰囲気は前走以上。いい動きだったし、体も締まってきた。力を出せるデキだね」と師。その前走・東スポ杯2歳S(2着)は勝ち馬(フサイチホウオー)を上回る差し脚(上がり3F33秒8)を発揮しながら、わずか1/2馬身及ばず長蛇を逸している。
しかし、収穫も大きかった。「初めて経験するタフな東京コースで、しかもスローな流れ(前半1000m61秒8)にスムーズに折り合って、上手なレースをした」と評価する師。「トレーニングセール出身で、体が仕上がっていたので、(入厩してから)手間暇かからず仕上げられるし、状態は充実している」と、完成度の高さをアピールした。
それを証明するように、ここまで(2)(1)(1)(2)着と連対率10割を継続中。センスの良さは特筆されていい。しかも、札幌→福島→東京といろいろなコースを経験してこの成績だから、精神的にも相当タフだといえる。
初めての中山コースも、まったく問題ない。東スポ杯で初めてコンビを組んだ北村宏騎手は「スタートセンスがいいし、スピードもある」とゾッコン惚れこんでいる。中山1600mの条件は、むしろ前走以上に持ち味を発揮できる舞台といっても、過言ではないだろう。
藤沢和師と朝日杯FSといえば、今から11年前のバブルガムフェローの優勝を思い出す。そして、昨年はジャリスコライトが1番人気を集めたが、フサイチリシャールの前に3着と後塵を拝した、悔しい思い出も詰まっているレースだ。
雌伏1年、フライングアップルで昨年の雪辱を誓う。