新横綱となった九州場所(昨年11月=福岡)では9勝6敗と1ケタ勝利に終わり、大失態を演じた日馬富士は、初場所では本来の力を発揮。15日間、全く危なげないところはなく、3度目の全勝優勝を遂げた。
日馬富士の独走を許したA級戦犯は白鵬と、依然ふがいない大関陣だが、気になるのは、これまで圧倒的な強さをみせていた白鵬に、かげりが見えてきたことだ。
初場所3日目で、平幕・妙義龍(26=境川)に苦杯を喫すると、12日目には大関・琴欧洲(29=佐渡ヶ嶽)に敗れて2敗目。この時点で日馬富士とは2差がつき、優勝争いへの興味はうすれてしまった。結局、千秋楽では日馬富士にあっさり寄り切られて、横綱対決を楽しみにしていたファンを落胆させ、日馬富士との世代交代の予感すら感じさせた。
12勝3敗は横綱として、まずまずだが、これまで白鵬が残してきた成績から比べれば、さびしいものだ。絶対的な強さを誇ってきた白鵬に、この1年かげりが見られるようになったが、初場所の相撲内容は、それを決定づける象徴ともいえた。
07年名古屋場所(7月)で横綱に昇進した白鵬は、昇進後、年3回以上の優勝をコンスタントに成し遂げてきた。優勝回数は07年が大関での2回を含め4回、08年=4回、09年=3回。これは、ライバル・朝青龍が存在した上での数字だ。
10年初場所(1月=両国)後に朝青龍が引退し、一人横綱となってからは、10年=5回、11年=4回(春場所は八百長問題で中止)と孤軍奮闘したが、12年に入って、一気に成績は落ちてしまった。同年夏場所(5月=両国)では左手人差し指をはく離骨折し、横綱昇進後最低の10勝(5敗)に終わるなど、優勝は年間2回に終わった。
優勝回数だけではなく、下位力士への取りこぼしも増えた。年間勝利は07年=74勝16敗(勝率.822)、08年=79勝11敗(勝率.878)、09年=86勝4敗(勝率.956)、10年=86勝4敗(勝率.956)、11年(年5場所)=66勝9敗(勝率.880)だったが、12年は76勝14敗(勝率.844)と、大きく勝率を落とした。
白鵬はまだ27歳で、衰えるような年齢ではないが、5年間、1度も休場しないで綱を張ってきた勤続疲労は大きいようだ。このままでは、主役の座を日馬富士に取って代わられそうな気配だ。優勝回数は23回で歴代5位の白鵬には、さしあたって、北の湖(24回)、朝青龍(25回)を上回る目標もある。
日本相撲協会としても、白鵬と日馬富士がしのぎを削ってくれるのが理想だ。白鵬にはもう一度、仕切り直して稽古に身を入れて、建て直しを図ってほしいものだが…。
(落合一郎)