この時期の監督は誰もが「優勝」という夢を抱ける至福の季節だが、楽天・ブラウン監督には前監督で名誉監督の野村克也氏という背後霊がついて回るだけに、大変だろう。
1月28日に都内ホテルで行われた、中曽根康弘元首相が発起人の豪華絢爛な「野村克也1500勝パーティー」でも、いまだに楽天監督を解任されたことをブツブツとボヤく始末なのだから。そもそも「名誉監督」に関しても水面下でひと騒動繰り広げられている。監督を解任された恨みから、楽天球団の暴露本を出すという野村氏の口封じのために、用意されたポストが3年契約の名誉監督だ。
「名誉監督に3年間という契約期間があるの? おかしくないかい」。野村氏が永遠のライバル視する、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督が首をひねったのも当然だろう。確かに本来、名誉監督に期限が付くのはおかしいからだ。だが、暴露本出版阻止、口止め料となれば、期限付きはむしろ当然か。
常識的に考えれば、好条件の「1年1億円、3年で合計3億円の名誉監督」で一件落着となるところなのに、この後にまたもや一波乱起こったのだ。「随分、柔らかく書き直したんや」と野村氏は周囲に強調したそうだが、結局、楽天暴露本は出版された。楽天・三木谷浩史球団会長の方は「なんで1年1億円という条件が表に出たんだ。誰がしゃべったんだ」と、名誉監督の待遇がリークされたことに怒りを爆発。昨年の末には「どうも楽天・野村名誉監督はご破算になりそうだ」という衝撃的な情報が球界の水面下で駆けめぐった。
最終的には楽天・野村名誉監督はご破算にならなかったのだが、ブラウン監督とすれば、白紙になった方がよかったかもしれない。名誉監督として、背後霊のようにつきまとわれれば、たまらないだろう。「広島でBクラス監督やったブラウンがなんでワシの後任なんや」と、文句をつけていた野村氏のことだけに、シーズンに入り、楽天が負ければ、ここぞとばかりにブラウン降ろしに動くのは、目に見えている。なにしろ自らがもう一度、ユニホームを着たくてしようがないのだから。
「やっぱりブラウンじゃあかん。ワシでなければ」と現場復帰を画策するだろう。野村背後霊の呪いか、楽天の二本柱の1人、田中将大が足首をネンザして久米島キャンプで出遅れ状態。「たいしたことはない。大事を取っているだけ」と首脳陣は言うものの、ピッチング練習を控える異例のスタートになっている。昨年の流行語大賞の一つにもなった「ボヤキ」は、外国人監督のブラウンには通用せず、意味不明だろう。が、2位になりながら楽天監督を解任された野村氏の怨念は軽視できない。
背後霊・野村名誉監督とも戦わなければいけないブラウン監督は前途多難だ。