今季、ヘッドコーチを務めたのは福良淳一氏(52)だった。コーチ経験すらない栗山英樹新監督(51)が、就任1年目でいきなりパ・リーグ制覇を成し遂げた背景には、福良コーチの功績が大きいといわれている。その福良コーチは栗山監督に愛想を尽かせたのか、日本シリーズ敗北が決まった翌日(4日)に退団を発表。あっさり、古巣・オリックスのヘッドコーチに“転職”した。
球団はその後、栗山監督の意向を踏まえ、新参謀探しに奔走したが、その人望のなさが災いしたか、交渉は難航。たどりついたところは、高校野球の監督である阿井氏の抜てきという仰天人事だった。
阿井氏は東京農業大学第二高校在学時の82年のドラフトで3位指名され、ヤクルトに入団。3年目の85年に一軍初昇格を果たしてからは、中継ぎで活躍。86年には9勝(6敗)1セーブの好成績を挙げた。90年オフにロッテにトレードされ、2年在籍した後、引退した。
プロでは10年間プレー。通算144試合に登板し、17勝17敗4セーブ、防御率4.79の成績を残している。栗山監督とはヤクルト時代のチームメイトとなる。
引退後、日本大学文理学部史学専攻の通信教育部に通い、教員免許を取得。97年4月に茨城・つくば秀英高校に社会科教員として着任。99年4月にアマ指導資格を認定されて、同校野球部の監督に就任。05年4月から川越東高校に転任し、教員として社会科を教えながら、野球部を指導している。甲子園出場こそないものの、激戦区の埼玉で今秋の県大会でベスト4に入る強豪校に育てた。
阿井氏は2学期が終わるまで指導に当たり、12月31日付で同校を退職し、来年1月1日付で日本ハムと契約する見込み。プロ野球出身の高校野球監督がプロ球界に戻るのは初めてのケースとなるが、その時点で阿井氏はアマ指導資格を失う。再回復については現在、明確な規定がない。最悪の場合、アマでの指導ができなくなり、阿井氏にとっては背水の陣でのプロ復帰となる。
スポーツジャーナリストのA氏は「栗山監督は温厚な人柄で知られていますが、選手としては大した実績がなく、コーチ経験もありません。その下で使われるとなると、嫌がるプロ野球OBも少なくないと聞いています。ヘッドコーチのなり手がないから、阿井氏に白羽の矢が立ったと見ていいでしょう。阿井氏もプロでの指導経験はありませんから、他のコーチとのあつれきが懸念されます」と語る。
リーグ制覇を果たしたのに、主力コーチが総辞めしてしまった日本ハム。有能なコーチがいなければ、選手も育てられない。V2を目指す来季は、いばらの道が待ち受けているようだ。
(落合一郎)