監視カメラで撮影した映像を基に不審者を素早く特定し、テロや犯罪を未然に防ぐシステムだ。犯罪をたくらむ人物が放つ独特の“オーラ”を検知できるという。
「このシステムは『DEFENDER-X』と名付けられ、開発したのはELSYS(エルシス)というロシアの政府系研究機関を母体とする民間会社です。汎用の監視カメラ2台に、ある程度の処理能力を持つパソコンがあればハード面は完成。しかし、録画した映像を独自のソフトウエアを使って分析する能力に特殊性があります」(防犯に詳しいジャーナリスト)
すでに効果は実証済みだ。2014年のソチ五輪では、1日に5〜15人を『不審者』として検知。該当者を事情聴取した結果、9割が薬物や酒などの禁止物の持ち込みやチケットを持たず不正入場を試みる客だったのだ。
では、どのように人の精神状態を可視化したのか。
「まず精神状態を人の“表情”から検出する画像処理技術です。対象者の顔の皮膚や眼球、口元、まぶたなどが、どれだけ動いたのかを検出し、それぞれの振れ幅や回数、周期を数値化します。次に顔を『攻撃的』『緊張』など50のパターンに色分けし、各部位ごとにその色を分析、精神状態を総合的に判断します。色付けするのは、空港などの職員や警備担当者が素早く判断できるように、との配慮からです」(同)
日本でも警察がこの技術に注目し、すでに試験的な運用を始めている。
国内の大手警備会社も自社の警備システムと『DEFENDER-X』を連携させ、新たな不審者検知システムの製品化を急いでいるという。
監視カメラの市場は今後右肩上がりで伸びていく。中でも通信機能を備えたネットワークカメラは前年比二桁増の成長率。監視社会への批判は続くが、反面、犯罪者の検挙に貢献しているのも事実なのだ。
近未来、ロボットが人間を監視、管理する時代が必ずやってくる。
だが、この警備システムは一種の“人間狩り”との声も…。