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まったくワールドカップ特需を喚起できなかったTBS

 6月29日、日本vsパラグアイ戦の視聴率は、平均57.3%だった。その前後の視聴率は次の通り。

7.0% 19:56〜20:54 TBS お茶の水ハカセ
7.9% 21:00〜21:54 TBS ザ・ミュージックアワー

57.3% 22:40〜25:10 TBS 2010FIFAワールドカップ日本×パラグアイ (スカパー5%)

61.2% 25:10〜25:25 TBS JNNニュース
53.9% 25:25〜25:55 TBS 全種類
11.8% 26:00〜26:30 TBS けいおん

 これを一見すると、たんに試合が始まってからテレビをつけた人が多かった、ように思える。しかし、真実はそれだけだろうか。むしろこの結果については、日本戦前の『応援番組』について重要な示唆があるように思えてならないのだ。

 ヒントは、前週のザ・ミュージックアワーの視聴率が9.8%だった、ということ−−。
 言い換えれば、日本代表の大一番を前にした、局側の必死なワールドカップ特需の期待もむなしく、「ワールドカップを試合開始前からテレビと一緒に応援しよう」、というような視聴者をまったく取り込むことが出来ず、むしろ、マイナスポイント=拒否、すらされたという事実だ。

 おそらく、現在のところ、少なくともテレビ視聴者にとっては、「試合開始の笛が鳴ってから“気持ちの”スイッチを入れて観戦しよう」、という反応こそが圧倒的多数派なのだろう。
 結局視聴率データからみえてくるのは、視聴者側で“電波のたれ流し”に対する『拒否の姿勢と実際の防御』という“目的と手段論”の連携が確立している、ということだ。

 思えば、香取慎吾の応援団とかスタジオの加藤浩次とかなんでもいいが、そんなのうるさいだけで別に誰もみたくない。
 視聴者は普段からこういったくだらないにぎやかしを見せられているから、「笛が鳴ってから集中して応援するぞ」(=拒否の姿勢)という目的を達成するために、「試合(の番組)が開始するまでくだらない番組はみないぞ」(=実際の防御)という手段を採る、というリーズナブルな対応が確立しているのである。応援番組の低視聴率は、そのことこその証左ではないだろうか。

 ちなみに同日のザ・ミュージックアワーは、オペラ歌手がなぜか〈翼をください〉を歌い、バイオリン奏者がなぜか焼肉店を紹介する、といった、お客さんの姿が見えない内容であり、しかもそんな番組が突然生中継のスタジオに切り替わり、観客たち(モデル事務所?)とともにうるさい司会者が日本がんばれ! と騒ぎ立てる中途半端な内容であった。

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