だが、7月30日の試合中にファールチップを左薬指に当てた伊藤光が、剥離骨折の診断を受け登録抹消となってしまった。その影響もあり、31日のゲームで先発マスクを被った嶺井は、先発ピッチャー・濱口遥大を好リードで引っ張り、5回表には自分のミスでピンチを拡げてしまうエラーもあったが、その裏に「自分のミスを濱口が抑えてくれたので、なんとか打撃で取り返したかった」との思いから、レフトスタンドへ貴重な1号ホームランをかっ飛ばし、久々に豪快な“歌舞伎投げ”も見せた。試合も宮崎敏郎のサヨナラヒットで劇的勝利を上げ、夏の一大イベント「YOKOHAMA STAR NIGHT 」に花を添えた。
嶺井のスタメン出場時は、6連敗中と結果が出ていなかったが、この日は4人のピッチャーをリードし、スワローズ打線を3失点に抑えチームを勝利に導いた。打って守って本人にとっても貴重な勝ち星となっただろう。
2016年にCSでファーストステージを勝ち抜ける決勝打を、ルーキー時代も交流戦でサヨナラヒットを放つなど、ファンの記憶に残る一打を度々魅せてくれる男。伊藤光の全治は今のところ不明なだけに、嶺井の存在はなおさら貴重になってくる。「なんくるないさ」の本当の意味は、「努力すればいつかいい日が来る」だという。沖縄出身の嶺井に、今こそこの言葉が当てはまる。
取材・文・写真 / 萩原孝弘