これで、チームは『開幕5連敗』。松坂に対する風当たりはさらに強くなっていた。
「連敗の敗因は、先発投手陣がゲームをしっかり作れなかったからです。レッドソックスの投手陣はビッグネームが揃っています。開幕投手のレスター(昨季19勝)、第2戦先発のラッキー(同14勝)、第3戦先発のバックホルツ(17勝)で、開幕カードを1勝もできなかったのは痛いですが、3人は徐々に調子を取り戻していくと思われます。ただ、松坂も登板したインディアンズとの3連戦で勝ち越せなかったので、おかしなことになるかもしれませんね…」(3日時点/米メディア陣の1人)
「おかしなこと」とは、先発ローテーションの再編である。
米スポーツ専門TV局・ESPN(電子版)は「レッドソックスがトレードを模索している」と報じ(3月12日時点)、放出要員の1人に、松坂を挙げていた。
こうした“雑音”は当然、松坂の耳にも届いていたはずである。
レッドソックスの先発陣を改めて見てみたい。「レスター、ラッキー、バックホルツ、ベケット、松坂」のローテーションで開幕を迎えたわけだが、今季限りでの引退を表明しているウェイクフィールドには「先発ローテーション入りの花道を作る方向」で、新任のヤング投手コーチは、26歳を迎える左腕・ミラーを“再生させる”自信も口にしていた。また、セットアッパーのバードとウィーラーは「先発としての適性も秘めている」とも称されている。
つまり、ローテーション入りが可能な投手が4人もいるわけだ。
「3年連続で15勝以上挙げているレスターと、メジャー通算116勝のラッキーは首脳陣からの信頼も厚く、昨季、3週間のDL(故障者リスト)入りがあったにもかかわらず、17勝をマークしたバックホルツは地元ファンからの人気も高い」(前出・同)
ローテーション再編の標的にされるのは、やはり松坂か…。
松坂の放出論は今に始まった話ではない。昨年末、かなり具体的な放出論が報じられていたのだ。それは、「メッツのベルトラン外野手との交換トレード説」。当時、レッドソックスはこの放出報道の火消しにまわったが、ここまで具体的な“憶測”は初めてだった。
前出の米メディア陣の1人は「私見」と前置きしたうえで、当時の報道をこう分析する。
「レッドソックス、メッツ両球団に怪しい動向が見られたと聞いています。松坂の放出トレードが成立しないのは『トレード拒否条項』を契約に盛り込んでいるからです。そもそも、このトレードはベルトランとメッツ球団の不仲が発端で、レッドソックスも調整法に対する不満を日本人メディアにこぼしてきた松坂に、良い印象は持っていません。両球団の利害関係が一致したというか…。レッドソックスは松坂でトレードビジネスをまとめたいが、トレード拒否条項がある以上、松坂自身が『移籍してもいいと思える球団相手』でないと…」
同僚の岡島秀樹(35)もオープン戦でのスロースタートが響き、開幕ゲームをマイナーで迎えた。地元紙によれば、トレードを直訴したものの、首脳陣が出し渋ったという。救援投手がコマ不足に陥れば昇格の可能性は高い。しかし、こんな情報も交錯している。
「(球団は)今は出せないという複雑な言い方だったそうです。救援投手陣に不安があるからだと思いますが、別の意味にも聞こえなくはない」(現地特派員の1人)
今季のレッドソックスは日本人投手に冷たすぎる。単なる偶然か、それとも、岡島を巻き込んだ『複数トレード』を検討しているのだろうか。