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痛いラッパーが他人事でない!? 映画「SR サイタマノラッパー」で思わぬ「新人賞」をとった入江悠監督

 昨年公開された青春映画「SR サイタマノラッパー」(4月10日より一週間、新宿バルト9でのリバイバル上映予定)で、この映画を監督した入江悠監督が4月7日、第50回日本映画監督協会新人賞を受賞した。さして有名な役者を配したわけでもなく、内容の過激さも薄いこの作品が、「最も新人賞らしい」という理由で選ばれた。それは喜ばしい事だが、映画の主人公同様、映画界の「痛い現実」が、この先も若手監督たちを襲う。

 第50回という、節目の受賞で同協会理事長の崔洋一監督からピラミッド型のトロフィーを受け取った入江監督は、30歳を過ぎたばかりの若手。大きなヒット作も無く、映画ファンの中でもかなり無名な存在だった。ちなみに第一回は大島渚監督がもらったという、この新人賞は、他のノミネート作品がすごい。超有名なタレントが主演した大ヒット作や、ある程度人気の監督の作品なども候補に上がっていたはずだが、なぜか、ほとんど知られたキャストが出演していない入江監督の「SR サイタマノラッパー」が選ばれた。

 記者も授賞式の上映会で本作を見て、途中まではその辺りが不思議だったのだが、ラスト、主人公の若者がラップで自身の辛い現実を憎み、心をぶつけ合うシーンに涙が止まらなかった。「他人から理解されない漠然とした夢」を実現するのが、どんなに険しい事か。この作品が評価されなかったら、もう映画監督するのをやめようと思っていた入江監督の強い思いが「SR サイタマノラッパー」には込められている。

 ほとんど宣伝せず、口コミでこの映画の評判が広がっていった経緯は、異例中の異例。経済状態が安定しない現在、「SR サイタマノラッパー」程度の小作品は、テレビ局制作の映画や、ハリウッド映画に観客が集中し、内容が良くても興行的には成功しにくい現実がある。最初に制作する時点では赤字覚悟なのだ。この映画が評価されたのは大変喜ばしい事なのであるが、この先、入江悠監督同様に面白い映画を作っている若手クリエーターたちにスポットがあたるかも不明。それほど映画界はピンチなのである。
 それをふまえながら見ていると、バブル期の“いい時代”に活躍した「そうそうたる監督陣たち」にエールを送られ、新人賞のトロフィーを受賞する入江悠監督が、なんとな〜く浮いて見えたのは記者だけだろうか。

 「SR サイタマノラッパー」は、4月10日より一週間、新宿バルト9でのリバイバル上映。入江悠監督が賞金で制作した続編の「SRサイタマノラッパー2〜女子ラッパー傷だらけのライム〜」は、たくましい女の子ラッパーが大活躍! 6月26公開予定。

写真:崔洋一監督からピラミッド型のトロフィーを受け取った入江悠監督

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