まず、本作はツヴァイクという1930年代に活躍したメロドラマ作家の本「昨日の世界」が元になっている。そのツヴァイクは世界平和のためにヨーロッパの精神的統合のための運動も行っていたほどの平和主義者。そして彼は最期自殺してしまうのだが、その理由が自分が求めていた平和がやってこないことについて憤りを感じていたから、と言われているほど。そんな彼が書いた「昨日の世界」は世界で大戦が起こる前の理想的な状態の事がストーリーの軸になっている。
そしてこの『グランド・ブダペスト・ホテル』の舞台の1つである30年代は第一次世界大戦と第二次世界大戦が勃発するちょうど間の時代で、人々は世界平和を求めて戦争反対という思想が広まり、更にヨーロッパはファシストに占領されていた時代でもあった。実際に監督のウェスはナチスに対するヨーロッパの反応を知るため様々な本を読み漁り、それを映画に反映したと公言している。映画であからさまには語られていないが、背景をさぐっていくと監督が描きたかった平和への思いが読み取れるのだ。
今、日本は平和に感じる事も多いが世界ではまだまだ戦争などの脅威にさらされているところも数多くある。かわいい外見からは想像もつかない深いメッセージを読み取りながら本作を観ると一味違って見えるかもしれない。
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