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「歴史楽屋噺」パート4・田中角栄からの絶妙かつ適切な贈り物

 田中角栄元首相は、晩節こそロッキード事件で汚した。しかし当時の歴代首相のほとんどが旧帝国大学卒業というキャリアを持つ中、田中角栄は尋常小学校しか卒業していない土建屋の元社長。そんな彼が一国の首相に一代で上り詰めることが出来たのには訳があった。人心掌握の天才だったのである。

 例えば彼の周りには「番記者」という、各新聞社やマスコミから派遣された記者たちがほぼ365日いた。これは今でも有名政治家やスポーツ選手にとって、珍しい光景ではない。

 田中角栄は彼らに何をしたか。一年に一回ほど、何か節目の日にプレゼントをしたというのである。そのプレゼントが絶妙なセレクションで、記者たちの心をがっちりと掌握するには十分だった。

 そのプレゼントとはワイン。それも、「記者たちの給料では買えなくはないけれど、恒常的に買い続けるのはちょっと難しい若干価格設定の高い品物」 だったという。

 こういう政治家からのプレゼントは非常に難しい。高すぎると贈った方も貰った方も法に触れる恐れがあるし、安すぎても政治家は自分のイメージを落とす可能性がある。

 そういった意味で田中角栄が番記者たちに贈ったワインは、いまだに語り継がれているくらいだから、封を開けた瞬間の記者たちの「おおお!(これ飲みたかったんだ! そして絶妙のセレクションだ! さすが角さんだ!)」という感嘆が想像に難くない。

 たとえはアレだが、芋焼酎好きなら「伊佐美」の一升瓶あたりをプレゼントされたら人心掌握されてしまうのではないか。日本酒好きなら「久保田」 の大吟醸を一升瓶で頂くようなイメージか。
(みんみん須藤)

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