こうした若い指導者たちは『横の繋がり』を大切にする。出身大学の先輩後輩の関係はもちろん、学生時代は面識がなかったとしても、「同じ大学所属のリーグの出身者であれば」と“接点”を見つけ、定期的に集まっている。他校の有望選手のことや中学硬式野球クラブの動向などの情報を交換し、手帳を開き、集まった監督同士で練習試合の日程を組むことも珍しくないという。
40代の教諭監督がかつてこんな話をしてくれた。
「30代までは体も動くので生徒たちと一緒に泥まみれになれますし、同じ目線で語り合っていれば良かった。でも、40代になれば体力的にも30代と同じことはできません。そういうとき、同年代や年上の仲間に相談でき…。反対にこちらが後輩に経験談を話すこともあります」
教員免許を持たない“職業監督”もいれば、教鞭も執る教師監督もいる。しかし、どちらの高校野球指導者に対しても学校が求めるのは、子供を預ける父母の信頼だ。
その是非はともかく、合宿所も持つ野球強豪校には他県から入学している生徒も多い。こうした高校では指導者の役回りは、教室(授業)とグラウンドだけではない。昨夏の甲子園大会を制した前橋育英がそうだったが、監督は生徒と同じ合宿寮に住み、監督の奥さんも寮母を務めていた。
全国には合宿寮に住み込んで生徒指導に当たる監督、コーチも少なくない。
指導者が住み込みで生徒たちをその監視下に置くとなれば、生徒間のトラブル、イジメはまず起きない。父母の側にすれば、安心して生徒を送り出せるわけであり、高校野球の監督、コーチになるということは、“24時間全て”を野球指導に当てる覚悟が求められるわけだ。
昨年12月3日、都内で『スポーツ セカンドキャリア シンポジウム』が開催された。プロ野球OBの指導者復帰に関する規制緩和についても話題が及んだが、そのプロ側の講習会に関係したパネリストの1人が衝撃的な発言をしている。
「年長の有名なプロ野球OBも参加していたが、後輩に『仕事がないんだ、まわしてくれ』とたかり、覇気のない受講者(プロ野球OB)もたくさんいた」−−。
真剣に講義を受けたOBももちろんいたそうだが、父母たちが安心して子供を預けられる指導者像についても、プロ野球側は考えなければならない。甲子園は献身的な指導にあたってきた監督、コーチたちの苦労が実る晴れ舞台でもあるのだ。(スポーツライター・飯山満)