「日頃の人間関係や、何をやってもうまくいかないような閉塞感のような、日常のストレスに囲まれているのが我々の生活ですが、それが一切ない、まさしく“理想の日常”を描くだけのアニメが“日常系アニメ”です。その代表的な作品が、《けいおん》。元々、軽音楽部の活動を題材にしているものの4コマ漫画ですので、肝心の演奏の様子があまり出てこない。登場する萌えキャラの女子高生達のなんのこともない日常会話の妙が、唯一の見どころだったんですが…」(アニメに詳しいライター)
ところが、《けいおん》は、その後、思いもよらぬ人気を博すことになったという。
「アニメ化され、原作のエッセンスを元に登場人物の性格や行動をパターン化せずに深く描くことで、その子が考え抜いて行動するさまが、30代までのヲタだけでなく、若い人の青春のバイブルになってしまった。こうして命を吹き込まれた登場人物たちが、その思いを胸に秘めて演奏するシーンで、泣く人が続出して、ブレイクしたんです」(同)
なるほど。そう言われると、少しずつ人気のわけがわかってくるような。
「いっぽうで、演奏される曲は、アニメソングの王道を往くぶっ飛んだ曲調の新鮮な音楽でした。いわゆる、“神曲”といわれるもの。こうして、今や《けいおん》は、青春真っ只中の大学生くらいまでの層からも支持を受け、キャラクターグッズは、女子中高生あたりにも売れている状況が続いています」(同)ということなのだ。
ネット掲示板などには、「その辺のアイドルよりももっと評価されるべきなのに二次元だからという事で評価されないという偏見がこの世の中間違ってると思う」「唯は憂にひび感謝ですもんねっ。その気持ちがこもってていい歌だとおもいます」(原文ママ)などの意見が飛び交っており、今回の取材内容を裏付けるようなコメントともいえるだろうか。
では、ポスト“けいおん”というと、どんなアニメが人気なのか。
トレンディ雑誌などの情報を頼りに(苦笑)やっと捻り出したのが、フジテレビ系列・《坂道のアポロン》というのは、違うのだろうか。ジャズも出てくる。
「《坂道のアポロン》は、ノスタルジックな内容ですし、恋愛模様が中心ですから、ちょっと世界観が違うんです…。あくまで、今どきの青春が描かれていて、登場人物もたくさんいる作品、ひいて若い人にも人気がさらに出そう…ということとなると、《アイドルマスター》あたりが筆頭でしょうか」(都内のアニメショップ店長)
…千早というアイドルの子が、声が出なくなったが仲間に支えられて復活する、というエピソードを、たまたまテレビで観たのを思い出した! そこには、悩みというものに対する、理想の日常が描かれているといえるのではないか。
「ほかにも、ポスト《けいおん》と呼べそうなのは、音楽モノに限らなければ、《ゆるゆり》、《ロウきゅーぶ!》などが挙げられる。うちでも、《けいおん》をきっかけにファンになる方が多い日常系アニメです。内容は、バスケ部など部活の青春がテーマです」(同上)
今まで、日常系といえば、ふわふわした日常やギャグが中心だったようだが、これらの作品は、“ちょっとアツい新たな日常系の世界観”が描かれた作品、ということで、更なる知名度のアップも期待されているそうである。