夏の甲子園大会も始まり、金本阪神は8月2日からの長期ロードに出発した。この時期、阪神が本拠地・甲子園球場を高校球児に明け渡すのは“恒例行事”であって、今さら、そのリスクを論じるつもりはない。しかし、今夏の長期ロードは金本知憲監督(48)にとって、転換期になるかもしれない。
「フロントと現場の距離を縮める機会にもなるのではないか、と。金本監督になって、一軍と二軍、現場とフロントは近年にないくらい良好な関係となっています。でも、現場とフロントに関しては言うと、お互いに気を遣いすぎているというか…」(球界関係者)
気を遣いすぎる現状から『良好な関係』に発展させるのにはどうすればいいのか? そのキーマンとして浮上してきたのが、前監督であり、現在はシニアアドバイザーを務める和田豊氏(53)だ。
和田SAは4年間の指揮で、この8月の長期ロードをむしろ得意としていた。負け越したのは一度だけ。一時期、阪神は最下位にも沈んだが、息を吹き返しつつある。今夏の長期ロードを巧く乗り切れば、「Aクラス確保」の確率はかなり高くなる。
「阪神はフロント上層部と現場がシーズン中も定期的に会い、意見交換をしていました。中村勝広氏がGMとしてご活躍されていたころは、とくに頻繁に行われていました。『月一回』のペースで行われていた年もありました。今でも『報告会』と称して、定期的に現場とフロント要人が会っているはず」(前出・同)
定期的に会っているにも関わらず、金本監督と和田SAの距離を縮めようとしている理由は? 和田監督時代を知る阪神OBが当時をこう振り返る。
「和田監督の時代? たしかに8月の長期ロードは強かったですね。何か特別なことをやっていたという記憶はないけど…。ビジターのチームは練習時間が短くなります。暑さと寝不足で体が動かなくなることも多いので、和田監督はベテランだけではなく、レギュラーや中堅選手の練習も免除するなどしていました。やっていたのは、それくらいだと思うが…」
遠征試合が2カード以上続く際、練習免除を言い渡す他球団監督も多い。とくに和田SAが特別なことをやっていたわけではないようだ。それでも、経営陣は和田SAと金本監督の距離を縮めようとしている。
関西圏で活動するプロ野球解説者がこう言う。
「金本監督が就任して以来、チームの練習量はかなり増えています。若手は将来のために練習しなければなりませんが…」
一部の球団首脳陣の目には「チーム全体がオーバーワーク気味」と映っているそうだ。
新人・高山俊が不振に喘いでいたころ、その休日返上の打撃練習には金本監督自らが立ち会い、指導もしている。こうした地道な努力がいずれ実を結ぶはずだが、「金本監督も練習の多さで這い上がってきた人。金本監督が目を光らせているとなれば、試合前の練習は単なる『調整』ではなくなる」(前出・関係者)
と、危惧しているのだ。
昨秋のキャンプ中、金本監督は宿舎に戻ってから素振りをする選手に「練習が足らないのなら、グラウンドでやれ!」と叱咤し、夜間練習を禁止した。金本監督もメリハリの重要性は分かっている。チームが世代交代の過程にあるため、「選手を休ませる不安」も抱いているのかもしれない。そのことを和田SAにアドバイスさせようとしているのだろう。