この研究は、2003年に起こった交通事故で脳を損傷した植物状態のベルギー人男性(29歳)を対象に行われた。「機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)」という脳スキャナーをセッティングし、意思表示の方法を「Yes」の場合には「飛んできたテニスボールをレシーブする場面」をイメージするように、「No」は「自宅で部屋から違う部屋へ移動している場面」をイメージするように男性に話しかけ、この男性の脳の反応を調査した。
すると、数々の質問に対して示された被験者の脳の反応パターンは、この実験の前に行われていた健常者の脳が示すパターンと一緒であり、この「Yes=テニスボールを打ち返すイメージ」と「No=自宅で部屋から違う部屋に移動するイメージ」の場合、健常者と同じ反応パターンの画像が記録され、男性の脳が正しく反応していることが確認できたという。
このように、話したり動いたりできない植物状態にあっても、脳内でイメージを思い浮かべることにより「Yes」「No」の意思を伝えられることがわかった。これは快挙であり、過去3年で植物状態の患者23人に対してこのfMRIを使った実験を行った結果、4人から何らかの反応が確認されたが、この「Yes」「No」のコミュニケーションができたのはこの男性1人だけである。だが、将来に向けて、この方法は意志疎通の手段を失った患者たちのケアや治療に重要な役割を果たすのではないかと期待されている。
(前野クララ 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou