プロ野球12球団とNPB(日本野球機構)は、WBCの大会運営会社『WBCI』と正式に交渉することが決まった。日本側の要求は不公平感の解消。その内容はすでに報道されている通り、前回大会の収益『約1800万ドル(約15億円)』のうち、メジャーリーグと同選手会には66%を分配されたが、日本側には13%しか振り分けられなかった。メジャーリーグが勝敗に関係なく、収益の7割近くを持って行き、優勝国の日本が1割そこそこしか得られないのは、確かにおかしい。また、約1800万ドルの大会収益に大きく貢献したのは、日本である。高額なテレビ放映料を払い、かつグッズ販売やスポンサー収支のほとんどは“NPB経由”である。
この改善要求の交渉だが、WBCIは「ポール・アーチー国際ビジネス担当取締役が応対する」旨をNPB側に回答してきた。幹部役員が出てきたのだから、「脈アリ」と思いきや、球界関係者の反応は芳しくなかった。
「(収益の)分配の割合が少し変わるかもしれないけど…」
現在の13%が15〜20%に改善される可能性はあるが、「アメリカ主導」の図式は変わらないと言う。では、プロ野球選手会が会見でも言っていたように(7月22日)、『出場辞退』に踏み切るのか? 現行の大会運営にはNPBも反対だが、今回はWBCの大会意義を見直す契機になればいいと見ているようだ。
NPB関係者の1人がこう説明する。
「メジャーリーグだけが儲かる図式は良くない。でも、WBCは彼らが提案し、各国に呼び掛けた大会でもあるんです」
収益の不合理な分配は今に始まった話ではない。しかし、この時期になって“改善要求”をしてきたのは、日本だけだ。今回の日本の主張は間違っていないが、NPBは何故、「脈ナシ」と分かっていて、WBCIとの直接交渉に臨んだのか? 今回の交渉内容は他の参加国にも伝わるはずだ。そうなれば、日本の主張に追随する参加国も現れるだろう。
大リーグ機構はWBC以外にも、“世界規模の野球イベント構想”を温めている。メジャーリーグのオールスター戦を現行の『ア・リーグ対ナ・リーグ』から、『アメリカ対世界選抜』に変更し、各国に参加協力を求めていくというもの。現時点では“試案”だが、アメリカ出身以外のメジャーリーガーも増えており、大リーグ機構が「やる」と決めれば、決して難しい話ではないだろう。
「こちらも、参加各国が大リーグ機構からテレビ放映権を買う図式になるでしょう。アメリカ(メジャーリーグ)主導で世界大会が開かれるのは、仕方ない部分もある。でも、運営する側にアメリカ以外の国も入れるようにしないと…。今回の交渉で他国にも賛同を得られたら」(前出・同)
9日未明、渡米した日本の交渉団から1回目の結果報告が入った。「交渉決裂」−−。予想していたこととはいえ、NPBの関係者は落胆していた。アメリカ主導の図式を代えるには相当な時間が必要である。