地下戦士たちの次なる戦場は、カトマンズより西に200km離れたネパール第二の都市・ポカラ(といっても、人口は20万人弱だが…)。空港に降り立った途端、富豪2夢路は信じ難い光景に目を剥いた。
空港にも、沿道にも、溢れかえる人、人、人。聞くところによると、ポカラでプロレスが開催されるのは今回が初めてなのだという。夢路と梅沢菊次郎の「カンパイ・ボーイズ」も、パレード車に乗せられ盛大な歓迎を受けたが、やはりこの街でも真のカリスマたりえるのはヒマラヤン・タイガーただ一人。ポカラの街は、20万弱の市民がすべて沿道に詰めかけたような、常軌を逸した熱気に包まれていたが、ここでは文字通りの「老・弱・男・女」が、
「ヒマラヤン・タイガーが来たぞ!」
と、一様に大興奮している。カトマンズでの大声援と大暴動を思い出し、改めてヒマラヤン・タイガーの影響力を思い知った夢路と梅沢なのであった。
ポカラでの試合は、20日に市内のサッカースタジアムで行われた。
驚くべきは、その動員人数。スタンドのはるか上段まで、びっしりと人が取り囲んでいる。その数、ざっと見て15000人以上か。そしてカトマンズの暴動を受けて、このポカラスタジアムには、警備としてトラック5台分(!!)の兵士たちが、有事に備えて待機している。
カトマンズでの、4000人強のネパール国民が生みだした“熱”を考えると、もしもこの15000人が一斉に激憤したとしたら、いったいどんな地獄絵図が待ち構えていることか。しかしながら夢路は、この15000人をヒートさせること確実の、とんでもない“作戦”を思いついていた。
それは、国民の英雄ヒマラヤン・タイガーをリング上で襲うこと。
この日の夢路と梅沢の役目は、大会中盤の3WAYマッチ。しかし「カンパイ・ボーイズ」は、中盤戦を粛々とこなすだけをよしとしなかった。俺たちはサムライ、このネパールに俺たちの爪痕を残すためには、英雄ヒマラヤン・タイガーを襲って国民をあっと言わせるしかない…。それが夢路たちの胸の内だった。
メインイベントは、ヒマラヤン・タイガーとビッグ・ヴィトーの問題の再戦。カトマンズのトラウマ(?)が残るヴィトーは、今回は国民的英雄相手にクリーンファイトに徹した。試合は結局、一進一退の好勝負の末、ヒマラヤン・タイガーの勝利。するとその途端、カンパイ・ボーイズが英雄目がけてまっしぐらに襲いかかった! トラック5台分の兵士が、やにわにいきり立つ。
するとビッグ・ヴィトーは、このリング上で生まれた混沌を、自身がヒマラヤン・タイガーとコンビを結成し、「パールハーバーでバンザイ・アタック!」の覚悟で飛び込んできたカンパイ・ボーイズと対峙することで終結を図る、という提案を持ち出した。カトマンズで夢路と梅沢に命を救われ、カンパイの杯を交わした友情が、ポカラスタジアムで花開いたのだ。ビッグ・ヴィトーの粋な計らいで、夢路と梅沢は急遽メインイベンターに“昇格”した。
そして唐突に始まった、ネパールの力道山&元WWEスーパースターの越境コンビと、カンパイ・ボーイズのタッグマッチ。四者の激情が交差する大熱戦となった。100%剥き身の感情をぶつけて来る、15000人超のネパール国民の前で、夢路は心底闘いに没頭し、頭が真っ白になるほど愉しんだ。試合はネパールの英雄が、カンパイ・ボーイズのバンザイ・アタックを返り討ちにして快勝。波乱まみれの“ネパール地下プロレス”は大団円となった。
さらに驚くべきことが起こったのが、試合後だった。国民の英雄の敵役で、大ヒールであるはずのカンパイ・ボーイズに、花道の子ども達が満面の笑顔でわっと押し寄せてきたのだ!
「フゴー! フゴー!」
子ども達にとって「フゴ」という響きが心地よいのだろうか。
「破壊王のお陰だな…。破壊王が、俺を救ってくれた」
「富豪2夢路」の名付け親である亡き恩師・橋本真也に、夢路は改めて敬意と感謝を、ネパールの空に思うのであった。
地下プロレス『EXIT』公式サイト
http://www7.plala.or.jp/EXIT/
梶原劇画で伝承された「地下プロレス」が、この日本に存在した! 闇の闘いを伝える『EXIT』とは何か!?
http://npn.co.jp/article/detail/97320773/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(1)
http://npn.co.jp/article/detail/54205265/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(2)
http://npn.co.jp/article/detail/71648266/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(3)
http://npn.co.jp/article/detail/84212018/
(山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou