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日本球界は大恐慌時代を乗り越えられるのか? 独立リーグ化(上)

 「本当に良かった、菊池がメジャーへ行かなくて。行かれていたら、日本のプロ野球は終わっていたよ」。球界関係者、テレビ局関係者が口を揃える。20年に1人の逸材と言われる花巻東の左腕・菊池雄星がメジャー行きを断念、ドラフト会議で西武が交渉権を獲得、無事に日本プロ野球界入りすることになったからだ。

 「入団先が西武だというのも良かった。甲子園のスーパースターだった松坂(現レッドソックス)を日本球界のエースに育てたように、育成には定評がある球団だからね」。球界のOBたちも胸をなで下ろしている。
 一方、菊池大争奪戦に参戦したドジャース、レッドソックス、レンジャーズ、ジャイアンツ、マリナーズ、メッツ、ヤンキース、インディアンスといったメジャー球団側は怒り心頭だ。「本人がメジャーへ行きたいと言っているのに、周囲がよってたかって邪魔して、日本球界入りさせてしまった。本当にフェアじゃないよ」と。菊池大争奪戦に関しては、勝者・日本球界vsメジャーという図式で一件落着した。が、日本球界の危機は去るどころか、メジャー側の大攻勢に風前の灯火である現実に変わりはない。
 「野茂、イチロー、佐々木、松井、松坂といった日本球界のスーパースターが相次いでメジャーへ流出した時は『このままでは、日本球界はメジャーのマイナー化してしまう。せっかく育てた集客力のあるスーパースターを次々に取られてしまい、残るのはメジャーに行く実力のない選手ばかりになってしまう。日本球界は日本人メジャーリーガーの養成所、マイナーリーグに成り下がってしまう』と、深刻な危機感を抱いた。が、今はそれどころではない。

 菊池のメジャー入りは危機一髪で回避されたものの、昨オフ、史上初めてドラフト候補生のいきなりメジャー行きという快挙を演じ、1年目の今季、2勝をあげた田沢(新日本石油ENEOS→レッドソックス)が、日本球界に開けた風穴はぽっかり空いたままだ。来年のドラフトの目玉の早大・斎藤佑樹もメジャー志向が強いから、どうなるか予断を許さない。アマ球界の逸材がいきなりメジャー挑戦のルートが出来てしまった以上、防止する具体的な対策はない。日本球界に背を向けるドラフト1位候補が相次げば、メジャーのマイナー化どころか、日本プロ野球界は将来性のない選手ばかりの独立リーグ化してしまう恐れがある。姨捨山になってしまう」。

 メジャーリーグに精通する球界関係者は、こう重大警告を発する。確かに、菊池の場合も最後の最後まで予断を許さなかったし、西武に入団後には松坂同様に、ポスティング(入札制度)でのメジャー挑戦という問題が起こってくる。そのXデーはまだ5、6年先だろうが、その前に来年、早大・斎藤佑樹のメジャー挑戦という深刻な問題が待ちかまえている。一難去ってまた一難だ。
 11月22日に東京ドームで行われたセ、パ誕生60周年記念『U|26NPB選抜対大学日本代表』で見せた早大・斎藤の集客力は驚異的だった。関係者ですら「初めてのプロ野球選抜対大学日本代表といっても、3万人来るかどうか」と予想していたのに、前売り完売、当日券なしの大盛況で4万人を超える大観衆が集まったのだ。「この佑ちゃん人気を見たら、巨人がなんとしても欲しいのは当然だろうな。ロッテが今からドラフト1位・斎藤を宣言するのもわかるし、神宮を本拠地にするヤクルトが熱視線を送るのも無理はない。キャンプ、オープン戦だけでどれだけ稼ぎ出すか、天井知らずでまさに金のなる木だよ。我々、電波メディアにとっても佑ちゃんは最高のソフトだからね」。視聴率がすべてのテレビ局関係者はこう言って舌なめずりする。

 相思相愛といわれる巨人などは、斎藤獲りのためにドラフト改正、希望枠復活を画策しているが、反対多数で実現性は極めて薄い。「選手の希望を聞くような制度に改正しないと、アマ球界からの逸材のメジャー流出は阻止できない」といくら訴えても、多勢に無勢では勝てない。来年も現行制度通りのドラフトになると、意中以外の球団が交渉権を獲得した場合、斎藤のメジャー行きの確率はかなり高いといわれる。それでなくとも、ハンカチ王子狂騒曲を奏でた早実時代、「早大進学」「プロ野球入り」の他に第三の選択肢として、「メジャー挑戦」があったほどメジャー志向が強い斎藤だけに、説得力のある話だろう。
(つづく)

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