近頃は、お笑い芸人やタレントが俳優をこなすことは珍しいものではない。ただ、鶴瓶はしっかりと結果を残している存在だと言える。
過疎化が進む山村の病院の医師たちの姿を描いた2009年公開の映画『ディア・ドクター』では、ベテラン医師を演じ、老舗の映画雑誌『キネマ旬報』(キネマ旬報社)主催の「キネマ旬報賞」において主演男優賞を受賞したほか、東京の各スポーツ紙の映画記者らによって選ばれるブルーリボン賞においても主演男優賞に輝いている。
2014年公開の『ふしぎな岬の物語』では、気のいい不動産屋のおじさんであるタニさんを演じ、日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞している。
鶴瓶は2010年代に入り、映画俳優として脂が乗って来ていると言えるが、テレビドラマにおいては、コンスタントに俳優として活躍してきた。嫉妬心から若い男女の仲をあの手この手で引き裂く卑劣な男性を演じた1996年放送の『硝子のかけらたち』(TBS系)、『ディア・ドクター』に同じくベテラン医師がハマり役だった2003年放送の『ブラックジャックによろしく』(同)、落語がモチーフのテーマながら本業の落語家ではなく、ユーモラスなヤクザの組長を好演した2005年放送の『タイガー&ドラゴン』(同)などがよく知られているだろう。2013年の大ヒットドラマ『半沢直樹』(同)では自殺してしまう主人公の父親役を演じた。
こうして見ると、鶴瓶は実に幅広い役柄をこなして来たとわかる。さらに、タレントや落語家としての人生経験も相まって、今後もますます渋みを増した演技を見せてくれそうだ。