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コンピューターゲームの20世紀 第35回『タイムギャル』

<アーケードの永遠のアイドル>

 今では見る影もないものの、かつてはゲームセンターで一世を風靡していたゲームのジャンルにLD(レーザーディスク)ゲームと呼ばれるものがある。その名の通り筐体にレーザーディスクプレイヤーを内蔵したこのゲーム機は、当時としては圧倒的な大容量を誇っていた。しかし、LDゲームが市場に出回った1983年当時は、まだCD-ROMすら実用化される前である。LD自体にプログラムを書き込むということはまだ不可能であり、LDプレイヤーは基板から送られる信号に従って映像を再生する装置に過ぎなかった。とは言え、TVアニメさながらの映像を再現するゲーム機はプレイヤーに驚きを与え、LDゲームはこれまでにはないゲームとして大いに期待されたのである。

 今回紹介する『タイムギャル』はLDゲームの中でも一部マニアに圧倒的な人気を持つ作品。そのため様々なハードに移植されているが一部を除き高値で取り引きされており、最も再現度が高いと言われているレーザーアクティブ版は10万円近い値段で売られていることも多い。また、このレーザーアクティブはハード自体も高額で入手が難しいため、これら全てを揃えようと思ったら相当の出費を覚悟しなくてはならない。プレイ環境が最も整っているPS版は再現度に劣るが、それでも中古価格で5000円程度が相場である。やはり、一般プレイヤーは手を出しにくいゲームなのだ。

 さて、このように根強い人気のゲームである。さぞかしゲーム性が素晴らしいのだろうと考える読者の方もいるかと思われる。しかしながら、先にも述べた通りLDプレイヤーは動画を再生するためにしか存在しておらず、画面上に映し出されたキャラを自由に動かすことなどはできない。それではどのようなゲーム性になっているのかというと、画面上には常にアニメーションによる動画が再生されており、それが分岐点にさしかかると画面上に指示が表示される。この指示に従ってレバーを上下左右にいれるorボタンを押すという操作に成功すれば、動画の再生が続きストーリーが進んでいく。操作に失敗した場合は失敗の映像が流れ、リスタート地点から再びプレイすることになる。そして、一定の回数の失敗でゲームオーバー、最後まで動画の再生に成功すればゲームクリアという具合である。あまりに単純なゲーム性に驚いてしまうが、実際にLDゲームのほとんどは同様のゲーム性なのである。また、このように単純な操作ながら、入力の受付タイミングが非常にシビアであるため、クリアのためには操作を全て覚えていかなければならない究極の覚えゲーという側面も持っている。

 このように、あまりにゲーム性に乏しかったため、LDゲームはわずか3年ほどで市場から姿を消してしまった。また、筐体が高価であること、常にLDプレイヤーが作動しているため故障が多く、メンテナンスの手間がかかること、アニメーションを製作するためのコストが非常に高かったことも衰退の大きな要因であった。

 当然、『タイムギャル』もゲームセンターで稼働していた期間は非常に短い。実際にプレイ経験がある人もそう多くはないだろう。また、前述の通りゲーム性も褒められたものではなかったが、ここまで熱狂的な人気に支えられているのはなぜか? その人気の根源は主人公キャラ「レイカ」の魅力に集約される。アニメーションを最大限に活かしたそのキャラの動きは躍動感に富んでいて、実に魅力的であったのだ。特に入力を失敗した場合の「やられシーン」は実に様々なバリエーションがあり、そのシーンを見たいがためにわざと失敗する誘惑に駆られることも多かった。また、CV山本百合子さんのアドリブ満載の演技も大いなる魅力に溢れていた。当時は「萌え」や「おたく」という言葉はまだ使われていなかったが、既にゲームセンターにはそういった層が集まる傾向があり、女性キャラのゲームに熱烈なファンが発生したのもちょうどその頃である。本作はおたく文化黎明期を代表するゲームでもあるのだ。

 このようにキャラに人気が集中した本作は、稼働台数・期間共に短かったにも関わらず、「レイカ」がタイトーのマスコットキャラに採用されるなど破格の出世を遂げる。また、タイトーの直営店に飾られてあった彼女の等身大ポップは、マニアにとって垂涎のまとであった。80年代から90年代のタイトーを代表する人気キャラ「レイカ」は21世紀に入っても、その魅力にかげりが見えないのである。(須藤浩章)

※画面写真はPS版のものです

DATA
発売日…1985年
メーカー…タイトー
ハード…アーケード
TAITO CORP.1996

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