最終追い切り後、同厩の南半球産馬キンシャサノキセキと比較してどうかと堀師に質問が飛ぶと、「キンシャサに比べて成長は遅いけど、こっちは素直」という答えが返ってきた。その従順ぶりが如実に現れたレースだった。
折り合い難が成長を妨げているキンシャサに対し、ロックドゥカンブはコース、重賞ともに初物尽くしでも、掛かる素ぶりはほぼ見せなかった。馬なりのまま3角すぎで早くも先頭に立つと、直線は搭載エンジンの違いを見せつけ、1馬身半差の完勝だ。1分47秒7(良)の勝ち時計も、馬場状態を踏まえれば上々といえる。
「反応が鈍いイメージがあったので、早めに気合をつけた」とテン乗りだった柴山騎手のゴーサインに即座に反応。成長度こそスローだが、乗り手を選ばない従順ぶりは、キンシャサに唯一欠けている点ともいえる。皮肉にも1つ年上の“同郷”の先輩を押しのけ、あっさりと重賞を制覇した。
そして、南半球産=半年遅生まれの特権でもあるハンデ52kgも味方した。普段は冷静な柴山から「最後に外からこられたら、逆にもっと伸びた」と言うコメントが飛び出したのは、やはり、牝馬より軽いハンデの恩恵があったからこそだろう。
加えて、その柴山の福島経験も手伝った。今よりもっと酷い馬場だった昨年の福島牝馬Sを同厩スプリングドリューで制しているだけに、どこの馬場が伸びるのかは頭の中にインプットされていたのかもしれない。事実、荒れ放題の内よりちょっと外めの一番伸びるところをしっかりと走っていた。
これでデビュー以来、無傷の3連勝。次走は未定だが、類まれなレースセンスを持ってすれば距離、コース、馬場を問わないオールマイティー型として育つ可能性は高い。今春の牡馬クラシックが荒れに荒れたことで、混とんとする菊路線。既成勢力に脅威を与える伏兵が、みちのくの地で誕生した。