よく聞かれる体験談としては、亡くなった人の霊が「水がほしい」と訴えてくるので、そのとおりに水を上げた所、お礼を言って成仏したというものがある。戦争で亡くなった人などの霊に遭遇したケースでよく聞かれるものだ。
以下のケースは、もう少し時代が古いものになる。
Tさんの実家の裏山には、みかんの木が多く自生している。実のなる季節になると辺りによい香りが漂うものの、採って食べる人はいないという。何故なら度々、地中から木に向かって「火の玉」が上がるからだ。そこはかつて戦や飢饉で大勢の人が何度も死んだ場所であり、その怨念が火の玉になると言われている。
「また今年もあがったね」
これが地元住民の間で季節の話題となっているそうだ。その火の玉はいずれもみかんの実にぶら下がる様にひっつく。土地の老人たちの話では「亡者がみかんで喉を潤す」のだと言う。
「ですから、私達は野生のみかんを『仏さんの実』と言って食べないのです」
Tさんはそう話を締め括った。
監修:山口敏太郎事務所