『グッドライフ』は、韓国で200万部のベストセラーとなった趙昌仁の小説『カシコギ』が原作である。カシコギは韓国語で魚のトミヨを指す。トミヨのオスは、メスの産卵後は自身は食べ物を摂らず、ひたすら巣を守り続ける。このトミヨのような父親の無償の愛がテーマになるが、第1話では息子の病気は分かっておらず、仕事優先で傲慢な父親の孤独と息子の悲しみを描いている。
新聞記者の澤本大地(反町隆史)はスクープを連発する敏腕記者であったが、他人の話には耳を貸さず、自分の主張だけを押し通す傲慢な人格であった。職場ではパワハラで部下が自殺未遂を起こし、家庭では妻の華織(井川遥)に離婚を求められる。そして家を出て行った香織に代わり、大地が羽雲の世話をしなければならなくなった。
前半の羽雲は忙しい大人から見れば手のかかる等身大の子どもを演じていた。親から見れば「もっとしっかりして欲しい」となるが、子どもの立場では母親が出て行ったショックから「無理もない」となる。
しかし、後半に入ると何とか両親に仲直りして欲しいという羽雲の健気なまでの思いが明らかになる。両親の仲が上手くいっていないと、子どもは親の顔色をうかがい、気を惹こうと変な嘘をつくようになる。そのような悲しい子どもを加部が好演した。
演技の世界では「子どもと動物には勝てない」と言われる。ベテラン役者の計算された演技も、感情を素直に表現する子役の魅力の前に霞んでしまう。しかし、あどけなさだけで子役に感動するほど視聴者は単純ではない。子どもなりの悩みや苦しみを表現した演技だからこそ感動する。
たとえば2009年の大河ドラマ『天地人』では、樋口与六(直江兼続の子ども時代)を演じた加藤清四郎がブレイクしたが、その出発点は母親と引き裂かれた与六の「わしは、こんなとこ、来とうはなかった」という魂から絞り出すようなセリフであった。その意味で両親のすれ違いや難病を描く『グッドライフ』には、子役の見せ場が揃っている。新たな子役スターが誕生するか、『グッドライフ』の今後に注目である。
(林田力)