Oさんが中学生の頃、ある失踪事件が起こった。失踪したのは、Oさんの友人の友人、Iさんと言った。当時は大きな騒ぎになったという。
最初は家出などの可能性も疑われたのだが、騒ぎになっても姿を現さない上、6月か7月の、梅雨の時期のことであり、外を泊まり歩いている可能性も少ないと判断された。
警察の聞きこみ調査の結果、失踪したIさんは姿を消す前に、踏切近くの資材置き場で双子の男の子と遊んでいたことがわかった。
Iさんを探す手がかりは、一緒に遊んでいたその双子しかいなかったのだが、その近くに双子がいる家はなく、近所に住んでいた形跡すら見当たらなかった。
ただ、Iさんが失踪する前に、資材置き場で撮影されたと思われる写真のみが残された。写真には、資材置き場で一人で微笑むIさんが写っているだけで、捜査の手がかりになることはなかった。
それから4年後。Iさんの失踪事件を担当していた刑事が、Oさんの友人を訪れた。そして、とある写真を差し出した。
「4年前、Iさんと一緒に遊んでいた双子とは、この子達ですか?」
「!?」
写真を見た友人は凍りついた。写っていたのは、紛れもなく友人が目撃した双子であった。
「…彼らは何処に住んでいたんですか?」
「実はね…」
恐る恐る訊ねた友人に、刑事は眉をひそめながら口を開いた。
「いないんだよ」
「え?」
「Iさんが失踪する10年前、JRのK駅に近い踏切で事故があった。踏切の近くで遊んでいた子供が線路内に入ってしまってね、電車に轢かれて亡くなったんだよ」
「まさか…!!」
「そう、その子供が、写真に写っている双子なんだよ」
(こんなことがあるのか)
そう思って、友人は愕然とした。そして、あることに気が付いた。双子が写っている写真だが、2人は何故か人一人が入る隙間を空けて写っていたのだ。
「この写真、不自然ですよね?」
友人がそう訊ねると、刑事は無言でIさんが最後に残した写真を取り出した。2枚の写真を合わせてみると、Iさんが双子に囲まれて撮影したような写真になったそうだ。
これはK市ではないのだが、K県には神隠と付く地名があり、神隠丸山遺跡というものが存在する。
K県には神隠しに関する伝説は余り語られていないが、過去に何らかの理由があったからこそ地名になっているのだろう。
もし神隠しであれば、伝えられている伝承の中には数年後にこの世に戻ってくる例もある。
Iさんもいつか発見されることを、心よりお祈りしたい。