search
とじる
トップ > トレンド > 幻の食材? 天神崎のヒジキ

幻の食材? 天神崎のヒジキ

 和歌山県田辺市にある天神崎は、世界的にも有名なナショナルトラスト発祥の地です。桜も咲き始め春本番となると、この海も本領を発揮します。

 紀南地方の春の味といえば「ひろめ」と言う海草です。語源は、「幅の広いワカメ」と聞きました。天神崎で採れるものは肉厚で香りが濃く、サックリと歯ごたえが良いのです。残念なことに「ひろめ」は輸送や加工が難しく、他県では滅多に口にすることができないのだそうです。この季節、この土地だけで食することのできる味なのです。

 そして、海上では赤い旗を掲げたジャコ(イワシの稚魚)漁の漁船が目立つようになります。地元の魚屋や八百屋などでは、まるで夜店の金魚のようにビニール袋に生きたまま入れられたジャコを見ることができます。やはり新鮮なものはこの季節、この土地だけのものなので貴重です。地元ではお吸い物や卵とじ、かき揚で食べるのが一般的です。お勧めはお吸い物です。柔らかな風味のだしがよく出て、とても美味しいです。

 さらに、なんといっても天然のヒジキです。天神崎の観光シーズンはもちろん夏ですし、情報誌などにも紹介されていないので、知る人は少ないと思いますが、春の天神崎は圧巻です。民家の軒先、遊歩道、漁港やダイビングスクールなどの駐車場に「ヒジキ」が干されている景色が広がります。それがすべて天神崎で採られた天然のものというのですから凄いです。未だ冷たい春の風に乗って、海草独特の潮のいい香りに町中が包まれます。誰でも自由に採ることができるのだそうですが、地元の馴れた方々は別ですが、流石に素人には見分けることが難しく、加工も手間が掛かるので、お勧めはできません。

 よく乾燥されたヒジキは一時保存され、夏に、薪で火を起こし大釜で茹で、また乾燥させるという昔ながらの製法で作られます。市場に出回ることはほとんどなく、地元の小さな魚屋、八百屋で運が良ければ買うことができます。調理後、市販のものと異なり、色は少し茶色がかった透明感があります。肉厚で柔らかく、しかもコリコリとした心地よい歯ごたえがあり、なんといっても、濃厚で甘く、滋味という言葉がよく似合います。初めて天神崎のヒジキを食べた人は、ヒジキの概念が変わるのだそうです。大袈裟ですけど、その位美味しいのです。目の前にこんなにあるのに、一般では滅多に口にすることができないので、幻の食材になるのでしょうかね?

 しかし、この海の幸の豊富な海も、年々増える観光客や、ごみ問題、環境破壊などで、徐々にその姿を変えてきています。10年後、20年後も豊かであり続けられるように大切にしていきたいです。

(sel 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

関連記事

関連画像

もっと見る


トレンド→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

トレンド→

もっと見る→

注目タグ