もともと、アマチュア相撲の実力者だった大砂嵐は、初土俵から所要わずか8場所で十両にスピード昇進しており、その実力はホンモノだ。
今場所、対戦する力士のみならず、最大の不安要素はイスラム教の慣例であるラマダン(断食)とぶつかってしまうことだ。
昨年のラマダンも名古屋場所と重なったが、13日目からで、当時序二段だったため、7番しか相撲を取らないため、ほとんど影響は受けなかった。
当初、今年のラマダンは9日に始まる予定だったが、新月が確認できず、10日からにずれ込んだ。ラマダンはこの後、30日間続く。ラマダン中は日の出から日没まで、飲食が禁止され、水を飲むこともできない。
ラマダンに入る前の3日間で2勝1敗の星を残した大砂嵐は、ラマダン初日の10日(4日目)は、深夜2時にいったん起床し、ヨーグルトとニンニクみそのおにぎり2個を食べて備えた。
食事もさることながら、この猛暑の中で、水が飲めないのは厳しい。大砂嵐は大目にうがいをしたり、水を体にかけてもらったりで、しのいで、取組に挑み、元幕内の双大竜を寄り切りで破って、3勝1敗とした。
千秋楽までは、まだ11日ある。「親方もいます。仲間もいます。家族もエジプトで応援してくれています。関取として勝つこと、横綱になることが恩返しです。ラマダンとか政治のこととかは関係ない」と話した大砂嵐。試練の場所を、無事乗り切ることができるのだろうか…。
(落合一郎)