入門当初は初のアフリカ出身ということで話題となったが、今度はスピード出世で注目を浴びることになった。初土俵から所要わずか8場所での十両昇進は、外国出身力士では小錦(元大関)と把瑠都(元大関、現関脇)しかいない。
横綱まで上り詰めた曙、武蔵丸(武蔵川親方)、朝青龍、白鵬、日馬富士でさえ、ここまで早く関取になってはいない。戦績は42勝6敗1休で、勝率.875。誰しもが壁にぶち当たる幕下上位でも、7戦全勝で優勝を果たして、その壁をモノともしなかった大砂嵐の実力はホンモノだ。
十両昇進を決めた大砂嵐は「夢はまだまだ。もっと稽古して、もっと上を目指す」と、意欲を見せた。
イスラム教徒である大砂嵐にとって、新十両場所で待ち受ける“難敵”はラマダン(断食)だ。昨年のラマダンも名古屋場所と重なったが、13日目からで、当時序二段だったため、7番しか相撲を取らないため、ほとんど影響は受けなかった。
しかし、今年のラマダンは3日目の7月9日からで、千秋楽まで13日間、断食との闘いとなる。ラマダン中は日の出から日没まで、食事を摂ることは許されない。つまりは究極の腹ペコ状態で、相撲を取らなければならず、果たして力が出せるものかどうか…。
ラマダンを場所後にずらすことも可能だが、大砂嵐は「できるだけずらさない」と、自然な流れで臨む覚悟だ。
対策は深夜のドカ食いだ。大砂嵐は深夜に起きて、食事を摂る方向。とはいえ、深夜に食べても、相撲を取る頃には腹も減っている。対戦相手のみならず、空腹とどう闘っていくかが、来場所の大砂嵐のカギになりそうだ。
(落合一郎)