『RISE WORLD SERIES 2019 Final Round』
▽16日 千葉・幕張メッセ イベントホール
◎RISE WORLD SERIES 2019 -61kgトーナメント決勝戦(3分3R最大延長2R)
○白鳥大珠<日本/TEAM TEPPEN/RISEライト級王者>(1R 2分59秒 KO)●梅野源治<日本/PHOENIX/元ラジャダムナン認定ライト級王者>
※左ストレート
※白鳥が優勝
「ワン、ツーフィニッシュ狙いますから!」
TEAM TEPPENの那須川弘幸会長は、“神童”那須川天心と“ヴァンパイア・プリンス”白鳥大珠のTEPPEN勢2人が決勝進出を決めた大阪大会の試合後、高らかに宣言していた。それが現実になるかならないかは、日本人に無敗の記録を誇る“キング”梅野源治と対戦する白鳥の勝敗が鍵を握っていたのだが、那須川会長は「大珠が梅野君をKOします!」と、早くからKO勝ちを予言しており、誰よりも白鳥の勝利を疑わなかったのは、那須川会長かもしれない。
試合は序盤こそ、梅野のテクニックにペースを掴まれそうになっていたが、あえてミドルを「打たせて」みるなど、白鳥の心は平常心。むしろ、「やりやすかったですね。梅野さんの方がやりにくかったんじゃないかな」と試合を振り返るほど、試合が進むに連れて己の自信が怖さを上回った。準決勝から猛威を振るって来たボディが決まると、あの梅野の表情から余裕が消えた。会場も「もしや」というムードが出来上がりつつある中、白鳥の左ストレートがヒットすると、梅野がグラつき、続けざまに、左ストレートで遂に梅野がダウン。残り時間が少なかったが、これを勝機と見た白鳥は再び左ストレートをヒットさせると、梅野は崩れ落ち、白鳥がKO勝ちで世界トーナメント優勝を果たした。那須川会長の予言的中である。
「世界一は俺だ!」
滅多に感情を表に出さない白鳥だが、コーナーに登ると思わず絶叫。超満員の会場からは割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。“プリンス”が“キング”超えを果たしたジャイアントキリング。今回、肘なしのRISEルールでトーナメントに出場した梅野だが、ここまで積み上げて来たものが大きいことをファンがわかっているからこそ、生まれた感動的な試合だった。
「これからRISEを引っ張っていきます。天心を超して一番上に行ってやろうと思います」
「スター」になりたい願望が強い白鳥は、天心と行動をすることも多く、ちびっ子たちが天心にサインを求めて来る場面を何度も近くで見ている。それに対して、「凄いな」と思う反面、「いつかは俺も」という気持ちを心の中に留めていた。しかし、今回優勝を果たしたことで、「格闘技界を引っ張っていく位置に来た」と実感した。今後の目標として、現在保持しているRISEライト級王座の防衛戦、2年連続RIZIN大晦日参戦、世界の強豪との対戦などを挙げていたが、「今年の大晦日のRIZINは注目度の高い試合がしたい。あとはファンが見たいカードをどんどんやりたいですね」と語り、自分自身よりもファンが「見たい」と思えるような試合をやることで、格闘技界を「誰もやったことがないやり方」で広めて行きたい意向だ。
試合後のマイクでも会見でも、最初に出たのは「感謝」の言葉。準決勝からコスチュームのコンセプトをリアレンジして、“ヴァンパイア・プリンス”となり、入場時から雰囲気が増している。RISEの伊藤隆代表も「今回のトーナメントは白鳥が入場から化けた。天心に続くスターになってくれた」と称賛し、これを伝え聞くと「嬉しいですね」と笑みを浮かべた。だが、「ここで満足してない」という白鳥の進化は、高き志とともにまだまだ止まることはないだろう。
(どら増田 / 写真・垪和さえ)