「妹家族らと石材店の展示会に行った時、『このお墓、お母さんみたい』と皆が、自然に言い出しました」
ステンドグラスに花壇があり、洋風のアーチまで備えられた、亡き母のお墓を作った宮城県仙台市の鈴木理史さん(30)は、そう言う。いつも笑顔のお母さんだったそうで、「このお墓に来て、花で一杯の花壇で遊べば、子供たちもきっと明るい家庭を築くと思います」と鈴木さんは、早くも孫の姿に思いをはせる。
先日、墓石業者の全国組織「中間法人・全優石」(全国優良石材店の会)が、「第14回全優石ニューデザインお墓写真コンテスト」の結果を発表した。鈴木さんのお墓はニューデザイン賞20点の内の1点。
最高賞のニューデザイン大賞として1点だけ選ばれたのが、北海道勇払郡の真保生紀さん(64)が亡き妻のために建立した“雪ダルマ型お墓”。中央の大きな雪ダルマには“夢”の1文字を彫刻し、左前面には7体の小さな雪ダルマ。「七転び八起き」の意味も込められている。また、花立も雪ダルマの形にしてある。昨年6月に肝臓がんで亡くなった真保さんの妻、育子さんのための墓だ。
真保さんは、この6月まで早来雪だるま郵便局の郵便局長だった。在職時の1986年、収益増と地元の名物づくりを目的に、発泡スチロールに本物の雪を詰めた「雪ダルマゆうパック」を考案。発売から23年目になるが、全国各地から注文が相次ぐ名物になっている。
「本州育ちの妻は『雪のない地域の人には、きっと喜んでもらえる』と励ましてくれた。凍てつく冬に、パート女性と雪詰め作業も。雪ダルマゆうパックは、二人三脚で育てたものと思っています」と真保さん。墓は、そんな妻に捧げたレクイエムと言える。
この2基のほかにも、ユニークなお墓が揃う。墓石に“ありがとう”の文字が刻まれたもの。イタリアへの留学経験があるモザイク画作家によるモザイク画入り。亡き父の趣味だったアマチュア無線機を配したり、富士山の裾野までを型取ったものや、亡くなった順に墓石を積み重ねる斬新なデザインのものもある。
団塊世代のお墓づくりも進んでいて、「個性」や「こだわり」を持つ傾向が強くなっているのも、今回のコンテストに影響しているようだ。
○最新お葬式事情
お葬式も、こだわりを感じさせるスタイルが増えてきている。
故人の意志や家族の希望で「本葬」は行わない家族葬。好きな音楽や花を飾る、「偲ぶ会」式の無宗教葬。
海に散骨する「海洋葬」もふつうになっているが最近、増加傾向にあるのが「樹木葬」。墓石は置かず直接、土中に遺骨を埋葬し、1本の樹木を墓標にする葬送方式だ。
流行のエコロジーにぴったりだけに、当分は流行する?