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『南極大陸』国家的プロジェクトから等身大の人間ドラマへ

 TBS系日曜劇場『南極大陸』が、6日に第4話「さらば愛しき友」を放送した。地質学者の倉持岳志(木村拓哉)ら南極観測に挑んだ人々の苦闘を描くドラマであるが、今回は自信の持てない若者・犬塚夏男(山本裕典)を軸にした等身大の物語になった。

 TBS開局60周年記念を銘打った『南極大陸』は放送開始前からの注目株であったが、10月16日の初回スペシャルは「日本がんばれ」「日本は負けていない」との国威の露骨な押し付けに辟易する向きもあった。南極観測に旅立った第2話以降は大自然の猛威との戦いとなり、困難に挑戦する人間ドラマとして盛り上がってきた。
 倉持ら11人の越冬隊は食料が流されるというアクシデントに見舞われるものの、星野 英太郎(香川照之)による釣りの提案で、あっさりと解決する。むしろ越冬隊員の最若手・犬塚の抱える問題は根が深い。犬塚は父親からは「中途半端」と言われ、家業を継ぐことが嫌で、人生のきっかけをつかむため、犬の訓練経験があると嘘をついて南極観測隊隊員になった。今風に言えば自分探しである。
 南極観測には「国民に夢を与える」「国家を背負う」などの仰々しい文句が形容されるが、観測隊員も人間である。様々な面で国家を始めとする組織の嘘が明らかになり、組織に幻想を抱けない現代では、個人的な想いを背景にした方が真実味はある。
 主人公の倉持も父親の夢(ボツンヌーテン登山)の実現という個人的な想いが原動力になっていることが明らかになる。そして越冬隊の中で国家の論理を代表する監視役の氷室晴彦(堺雅人)もまた、倉持が気になって仕方がないという個人的な想いで動いている。我が身の危険を顧みず消火に走った倉持を「あのバカ」と言いながらも真っ先に追いかけるツンデレぶりを発揮している。

 『南極大陸』では国家的プロジェクトを背負う人々の国家とは無縁な人間模様が描かれることで面白くなったが、同じ6日に第43話「淀、散る」を放送した『江〜姫たちの戦国〜』では反対に徳川秀忠(向井理)が国家的使命に目覚めてしまう。
 これまで主人公の江(上野樹里)と秀忠は戦争が嫌いな現代的価値観に近い人物として描かれていた。ところが、髭を生やして雰囲気が変わった秀忠は大坂夏の陣の最後の局面で徳川家康(北大路欣也)から全権を委ねられると豹変する。
 大阪の陣では家康よりも秀忠の方が豊臣方に強硬姿勢であったと描かれることが多いが、『江』も最後になって通説と合致することになった。秀忠の豹変によって江と秀忠には溝が生じることになる。この溝がどうなるのか、次週以降の展開に注目である。

(林田力)

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