今回のフィギュアで度々議論の的となったのが、ジャンプについて。浅田は果敢に難易度の高い技に挑戦し成功させたものの、金メダルには手がとどかなかった。また男子でも4回転を軸に2大会連続の金を狙ったエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が果敢に4回転ジャンプに挑戦、しかし、結局は難しい技を回避したエバン・ライサチェク(米)が金メダルを獲得。日本チームのスタッフからは「スポーツである以上、難しい技を成功させて勝てないというのはおかしい」との声も聞こえた。
ただ、このような論争は今に始まったことではない。過去にトリプルアクセルで世界を魅了した伊藤みどりは東ドイツの金メダリストから「観客はゴム鞠が跳ねるのを見に来ているわけではない」と批判されたことがある。「日本人のジャンプの技術は確かに世界トップクラスでしょう。しかし、すでに伊藤みどりの頃から、ジャンプだけでは五輪は勝てないということはわかっていたはずです。それを承知の上でジャンプにこだわっているのですから。こだわるのは自由ですが、こだわるだけでは金メダルは獲れないということでしょうね」(スポーツ紙記者)。
ただ、金を狙うために難しい技を避ける傾向は、競技として停滞をまねく可能性もある。現役続行を表明している浅田真央や安藤美姫が、今回の結果を受けて、難易度の高い技に挑戦しなくなる傾向になるとしたら、それも残念なことである。