王者の細野悟(大橋)はここまで無敗。バズーカのニックネームがついているように強打が魅力のボクサーだ。対する榎洋之(角海老宝石)は前王者。昨年、WBA王者のクリス・ジョン(インドネシア)に挑戦するまでは無敗で、世界再挑戦を狙っている。
と、簡単に書いてみたが、これはかなり思い切ったマッチメークである。細野にしてみれば「無敗」の肩書に傷がつく危険性がある。榎は、もし負けてしまうと世界再挑戦の話がしぼんでしまうからだ。
近年のボクシング界で、このようなマッチメークは残念ながら少ない。せっかくいいところまで来たのだから、余計なリスクを冒さず、適当な試合をして世界戦のチャンスを待つ。こうした空気が業界にはびこっているのは事実だ。
しかし、東日本ボクシング協会長でもある大橋秀行会長は「すぐに世界戦ではなく、強い選手同士の試合をたくさん組んで、国内のリングを盛り上げる必要がある」と言い切る。テレビ局が世界戦をなかなか放送してくれなくなった昨今、好カードの実現に二の足を踏んでもマイナス効果しかないというわけだ。
歓迎すべき話だと思う。ファンは好カードを待ち望んでいる。選手もタフな試合をクリアすれば、よりたくましく成長できる。それでつぶれてしまうというのなら、そんな選手に世界挑戦の権利を与えるべきではない。今後も細野VS榎のようなカードが増えることに期待したい。日本ボクシング界がさらなる前進を果たすためにも。