03年オフのプレーオフ制度導入時を知る元在阪球団役員がこう言う。
「もともとは、営業目的です。ペナントレースの観客収益を安定させるため、つまり、消化試合をなくすために、プレーオフ制度の導入が検討されたんです。独走状態で優勝チームが決まってしまえば、9月からの約20試合は消化試合となり、商売になりません。今年度のロッテさんのように、3位チームが逆転で日本シリーズに進出できる醍醐味も楽しめますが、プレーオフ制度があれば、たとえばBクラスの主催ゲームもペナントレース終了まで観客動員数は落ちません。Bクラスチームの主催するAクラスとの対戦ゲームはもちろん、Bクラス同士の勝敗が3位チームの入れ換えに影響してきますから、ファンの関心は薄れません」
セ・リーグはオリックス、近鉄の合併・消滅問題後に導入された『交流戦』によって、当時全国TV放映権のあった巨人戦収益を減らした。その減収分を補う手段として、現クライマックスシリーズ導入に踏み切ったのだが、同制度による「2つの問題」はセ・リーグも認識していた。
1つは、ペナントレース優勝チームが日本シリーズ進出を保証されないため、「優勝」の意義、重みが失墜。05年オフ、ホークスは2年連続でペナントレースに優勝しながら、日本シリーズに進めなかったことで“苦情”を訴えたが、第2ステージで「1勝分」のアドバンテージを付ける程度の“微修正”に止まっている。
「韓国では、クライマックスシリーズと類似した方式のトーナメント試合をすでに行っていました。『韓国シリーズ』は1位チームと、2位以下のトーナメントチーム覇者が覇権を争います」(メディア陣の1人)
しかし、前出の元在阪球団役員の記憶によれば、パ・リーグがプレーオフ制度の導入を検討した際、韓国球界のことは「話に出ただけ程度」という。その代わりに『サンプルケース』として挙げられたのは、アイスホッケーの日本選手権だったそうだ。
「当時、西武オーナーだった堤義明さんがイニシアティブを握り、プレーオフ制度の必要性を訴えました」(同)
堤氏のアイスホッケー熱は有名である。
クライマックスシリーズの2つ目の問題は、リーグ編成にある。この制度を導入しているプロスポーツ競技のほとんどは「1リーグ制」なのだ。牽引的立場にいた者が球界を去った以上、その真意は分からないが、「堤氏は1リーグ制導入も見越していたのではないか?」と“勘繰る”向きもないわけではない。
「横浜の身売り問題もありますし、日本シリーズにペナント優勝チームの中日が進出できないなんてことになれば、オフの検討議案に上がってきます。たとえば、クライマックスシリーズと日本シリーズを一本化してしまうとか…」(球界関係者)
プレーオフ制度に逆上り、同トーナメント方式が導入されて以来、ホークスのペナントレース優勝回数は3回(ダイエー時代を含む)。同トーナメントには7回中6回進出しているが、日本シリーズに駒を進めたことは1度もない。オフの検討議案に上がるようなことになれば、その牽引役になるのは、言いたいことが山ほどありそうなソフトバンクホークスだろう。