同作で、父親&カメラマン&監督などを憑依的に演じた主役のひとりが、濱津隆之。30歳直前になって役者を目指した変わり者だが、前職はDJ。さらにその前は、お笑い芸人だった。
「大学を卒業したあと、よしもとクリエイティブ・エージェンシーが運営するNSC(タレント養成学校)東京校に11期生として入学。同期の木場光勇さんとお笑いコンビ“はまつとコバ”を組んで、漫才・コントを披露していたそうです。学生時は、500人ほどの生徒がいたなかで、上位20組が出られるデビュー舞台に立てたエリート。同期に、『キングオブコント2014』の王者であるシソンヌ、パンサーの向井(慧)くんなどがおり、彼らもその舞台に選抜されています」(事情通の芸能ジャーナリスト)
だが、濱津はブレイクの時を待たずして解散の道を選んだ。
それとまったく同じ例なのが、ゴールデンボンバー・鬼龍院翔だ。彼は、濱津の2期先輩にあたる東京NSCの9期生。かつては“チョコサラミ”というコンビ芸人で、相方は、しずる・池田一真だ。
鬼龍院はおもに、コントで使う小道具を作っていた。ダイナマイト、人魚のしっぽなど、独創的な物が多かったが、とにかく池田と仲が悪く、しょっちゅうケンカ。卒業すると同時に、解散した。その後は、芸人からバンドマンに転身。ゴールデンボンバーを結成すると、『女々しくて』がカラオケランキングで51週連続トップという大記録を叩き出し、カラオケ印税は一説によると3億円だとか……。
ちなみに、NSC時代の同期はハリセンボンやしずる・村上純、パンサー・菅良太郎など。濱津のパターンと同じく、この代にも『キングオブコント2016』の王者であるライスがいる。
“カメ止め”しかり、『女々しくて』しかり。東京NSCは、大ヒットメーカーの巣窟。芸人学びの場は時に、社会現象とコント日本一芸人を生む磁場と化すようだ。
(伊藤雅奈子)