そんな社会潮流のなか、マンガとの新しい出会い方を模索する「マンガナイト」というユニットがある。マンガナイト代表の山内康裕さん(31)は、マンガナイトを立ち上げたきっかけを、「大人が、カジュアルにマンガに出会えて、マンガの話ができる場所があればいいなと思いました」と語る。これまでに、マンガを介したコミュニケーションイベントやワークショップを開催している。
そして、活動を開始して2年目になるマンガナイトが、マンガとの新しい出会い方の提案として、「フキダシコミックス」プロジェクトを、本と人との出会いをコーディネートするユニット「ブックピックオーケストラ」とコラボレーションして立ち上げた。マンガの古書を丸々、ブックカバーで包んでしまうというものだが、中身が見えない代わりに、カバーには推薦者が選んだ印象的なフキダシ文言が記載される。フキダシとは、人物の心情や事物の概要らを端的に表現するマンガ特有の技法。「フキダシコミックス」は、2月から、都内にある漫画喫茶「神保町漫楽園」(千代田区)とカフェ&バー「Le Cafe RETRO」(新宿区)で販売を開始している。「神保町漫楽園」では、土日を中心に、好評を得ているという。
また、2月20日、「フキダシコミックス発売記念レセプションパーティ」が「神保町漫楽園」で開かれた。トークセッションとパーティが行われた。
トークセッションでは、山内さんとともに、ブックピックオーケストラの川上洋平さん(30)、アーティストや表現活動を法律の視点から支援する法律家NPO「Arts and Law」の永井幸輔さん(30)、モデレーターとして、東京大学大学院学際情報学府博士課程に在籍する阿部純さん(28)が壇上にあがり、「フキダシコミックス」プロジェクトの趣旨と概要を語った。
マンガ古書を包む「フキダシコミックス」は、すでにブックピックオーケストラにて実施されている「文庫本葉書」のアイデアをマンガに適用したもの。「文庫本葉書」ではカバーに郵便番号や宛名を記載する項目があり、購入した古書を読むほか、切手を貼って投函することもできる。トークセッションで、その「文庫本葉書」を扱う川上さんは、「それが誰かに読まれて勧められた本であるということは、とても価値がある事だと思う。本もマンガも広めていきたい」と抱負を語った。
また、弁護士である永井さんからは、コミックマーケットなどの事例を引き合いに、マンガという著作物の特殊性と可能性が説明され、研究者の阿部さんからは、本やマンガが現実世界でのコミュニケーション・ツールとして用いられることの面白さや、それを可能にする場所という観点から、マンガナイトや文庫本葉書はじめフキダシコミックスの展望が述べられた。
トークセッション終了後、パーティータイムとなった。参加者が持ち寄ったマンガが特製カバーに包まれ交換されるなど賑わいを見せた。(竹内みちまろ)