重賞で獲得したメダル総数は「5」と破格だが、一番ほしい“金”はゼロ。たまったうっ憤を吐き出すことができるか、ローレルゲレイロが悲願のGI金メダルへ向けてこん身のデモンストレーションだ。
1週前に坂路800m50秒6という好時計を計時していたため、「あまり時計を出す必要はない」(昆師)という予定だった今日の最終追い切り。確かに数字上は坂路55秒5と強調されるものではないが、しなやかなフットワークは歴戦の疲れを微じんも感じさせぬ動き。普段なら見栄えしないはずの雨天の中、毛ヅヤもピカピカに輝かせている。
「こんなに丈夫な馬は知らんというくらい。前走後も、GIというのにまったくこたえた様子はなかったからね。とにかく、今回も順調そのもの。調整面で心配することはないから」
集まった報道陣を前に、諭すように取材にこたえるトレーナー。「朝日杯にしても、ちゃんと結果を出している」と続けたが、要は輸送に対する不安も皆無ということ。レース当日までコンディション関係でのトラブルは考えられないといった表情だ。
前走の皐月賞は6着。初めて馬券の対象から外れてしまったが、「ジョッキーも初めてで2000mも初めて。着順こそ悪かったが、初物づくしの割に頑張ったんとちゃうかな。GI馬(ドリームジャーニー)も負かしているわけやしね」。勝ち馬ヴィクトリーとの差はわずか0秒3。1番人気アドマイヤオーラとは0秒1差の接戦だ。若干の悔しさをにじませながらも、師は愛馬の奮闘にねぎらいの言葉を与えた。
さて、舞台は東京芝1600m。距離については周知の通り「一番走りやすい」(同師)が、コースは初めてとなる。そもそもが左回りバージンのため、少々の不安を抱きたくなるのが人情だ。しかし、これについても師は「中山もGIではじめて走って(朝日杯FS)2着だからね。環境に動じないタイプだし、どんなときでも力を出せる。もちろん、回りについても心配はしていないよ」と一笑に付した。
状態にも舞台設定にも心配材料はなし。こうなると相手関係だけがキーポイントとなってくるが、「実際に走っていないので何ともいえないけど、これまでのような『こいつが出てくると怖いな』と思える馬はいない」と師は断言した。死角ゼロの今回こそがGI取りの最大チャンス。「なんとかこのあたりで決着をつけてほしいな」。昆師の目には勝利の2文字しか浮かんでいない。