この一戦へ向けての重要な前哨戦と位置付けて臨んだ前走のJBCクラシック。結果は次世代の王者として誉れ高いサクセスブロッケンにクビ差の辛勝となったが、雄大なストライド走法のこの馬にとっては絶対に有利には働かない園田での開催、さらには世界の厚き壁の前に返り討ちにあったあの灼熱のドバイから約7カ月ぶりの実戦であったことを思えば、“絶対王者”の底力を改めて見せつけたといえる。
現実に、「あそこでやれば絶対に勝たんとあかんかった。ヴァーミリアンの強さを再認識させられた」と藤原英調教師。乾坤一擲(けんこんいってき)で勝負に出たSブロッケンを管理する新鋭トレーナーを脱帽させるほど、ヴァーミリアンの壁は厚かった。
対照的に勝てば官軍、「一戦一戦、出走できるかどうかと悩まされて昨年とはデキが違うからね。前走時はオレも小回りの園田でどうかなと、アレコレ心配はしたけど、いざゲートが開くと、2週目の向正面で楽にサッと番手。もうその時点で“今日も勝てた”と思ったね」と、サラリと言ってのけるのはヴァーミリアンを担当する久保助手だ。
「賢い馬で坂路だと力を抜いて走るからコースにも入れて調整してきた。いじめていじめて馬をつくるのが(スパルタ調教で知られた)戸山厩舎で育った私流の仕上げ方。GIで侮いが残る走りはさせたくないからね。とにかく、カイバも桶から頭をまったく上げずに平らげるし、怖いぐらいに不安点が何ひとつない。世代交代の波を感じさす馬が何頭か出てきているが、うちの馬だって何度も古馬の厚い壁にはね返されてきたからね。このJCダート、そして東京大賞典、年内は負けるつもりはないよ」
砂上の猛者ヴァーミリアンが、国内GI7連勝と合わせ、JCダート2連覇の偉業を達成する。