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続・ブードゥー殺人の謎

 今から15年前の2001年、ロンドンのテムズ川岸にオレンジ色の布を巻きつけた樽のような物体が打ち上げられた。不審に思った人がよく見たところ、それは頭部と両手足を切り離された黒人男児の胴体であった。アメリカ同時多発テロに全世界が注目していた時期だが、それでも幼い子供が凄惨な暴力の犠牲になったことは、イギリス全土を震撼させたのである。

 結局、頭部と両手足は発見されなかったため、身元の特定には至らなかったが、検死結果は遺体の状況と同じぐらい衝撃的なものだった。最初に快楽殺人が疑われたものの、性器は無傷で残されており、肛門にも暴行の痕跡は見受けられなかった。しかし、血液の大半が失われており、消化器系からはアフリカで神明裁判や生け贄の儀式などに用いられる興奮剤が発見された。他方、食べ物などはほとんど発見されず、遺体の損壊状況などから「イギリス到着後、数日以内に殺害された」ことが明らかとなった。

 つまり、男児は何者かが生け贄に捧げるためどこかで誘拐し、イギリスへ連れてきたのである。英国初の儀式殺人として、事件はにわかにオカルトチックな色彩を帯びた。

 また、男児の骨を分析した結果、ナイジェリアで生まれ育ったことが明らかとなり、警察は同地へ捜査官を派遣した。しかし、顔はもちろん身体的特徴もほとんど得られていない状況で、干し草の山から縫い針を探すようなものだった。捜査官は熱心に調査を進めたものの、手がかりひとつ得られないまま帰国し、究明は行き詰まったかのように思われたのである。

 しかし、遺体発見の翌年にドイツから重要な情報がもたらされた。今なお人身御供の伝統を保っているのではないかと疑われる「ヨルバ族」の秘密結社から逃れた女性が、次のように証言したのである。

 「私は息子が人身御供の犠牲にされる寸前、かろうじて子供とともに逃げ出すことができた。私はテムズ川に打ち上げられた男の子のことを知っている」

(続く)

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