それは海外でも同じで、19世紀後半から20世紀初頭にかけてイギリスやアメリカでは交霊会や降霊術というものが流行した。それは学問的や宗教的なものと言うよりもオカルト的側面が強く、社会に対して不安を抱いていた人々が親しい人の死や自分自身の未来に対する不安を和らげるべく、内々で集まって自己解決を試みたのである。なので、霊とつくがそこまでおどろおどろしいものではなく、現代の人々が皆で怪談を語り合うような集まりを、もう少し神妙かつ真面目に行うようなものだったと見ていいだろう。
そして、この交霊会も霊のことを語り合う場であるためか、往々にして怪異が起き霊が姿を現すことも少なくなかったという。
記事の写真を見て欲しい。こちらはイギリスの交霊会の模様を撮影した写真である。人々が囲んでいるテーブルに白い煙のようなものがまとわりつき、そこから自分も輪に入れて欲しいとでも言いたげに白い手が伸びているのである。
以前紹介した、家具屋のテーブルに手が写り込んだ写真とよく似ている。この手の主もやはり交霊会で呼び出されてしまった幽霊なのだろうか? …と、言いたいところだが、実はこの写真はある人物の手によるフェイク画像である。
写真を作成した人物はウィリアム・ホープ氏、心霊写真家として当時イギリスで有名になった人物である。彼は写真を趣味にしていたのだが、ある時友人の写真を撮影した所、幽霊のようなものが写り込んだような写真を撮ってしまう。やがて写真の乾板にある細工を施すことで幽霊のように見える写真が「作れる」事に気づいた彼は友人らとともに心霊写真を撮影できるグループを結成し、依頼に応じて心霊写真を撮影するようになったのだ。後に、彼は詐欺師と認定されてしまうが、それでも亡き家族と並んで写真に収まることが出来るという事から、彼が亡くなるまで心霊写真を撮って欲しいという依頼は途絶えることがなかったという。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所