ある時は有力選手の流出阻止策として、そしてある時はFA選手との交渉材料として、各球団は複数年契約を戦略的に運用している。ただ、大きな期待を込めたその“誠意”が、空振りに終わるケースもある。
例えば、2014年オフに「3年総額12億円」でソフトバンクと契約した松坂大輔(現中日)。獲得当時は大きな話題となったが、右肩のコンディション不良が続き3年間で登板したのは1回(2016年10月2日楽天戦)だけ。本来なら大減俸となるが、前述の契約によって不釣り合いな大金を払い続ける羽目になった。
複数年契約を用いた球団は、往々にして松坂の一件のようなリスクにさらされる。球団のリスクを軽減するため、そして選手に責任感・緊張感を持たせるためにはいったいどうするべきなのだろうか。
この問いに対し、筆者は常々思っていることがある。それは「基準以下の成績→ベース年俸ダウン」とする“逆”出来高制の導入だ。
昨今の複数年契約は、「ベース年俸+出来高」という内容になっていることが多い。もちろん、該当選手が不振に終われば出来高を払わずに済むが、ベース年俸に関してはどのような成績であれきっちりと払わなければならない。
一方、“逆”出来高制では、不振の選手への支払いを抑え1年目から節約することができる。契約期間内でまともに働かず、大金だけをせしめていく“不良債権”も淘汰されるのではないか。
また、選手の成績いかんでは、契約を強制的に打ち切る条項を盛り込んでもいい。自身のプレーが立場に直結するとなれば、どんな選手でも責任感と緊張感を持って契約期間を全うしようとするだろう。
プロ野球ファンなら誰しも、これまでに「つかまされた!」と感じた選手がいるはず。そんな選手に喝を入れるために、ここはひとつ“逆”出来高制を考えてはいかがだろうか。
文 / 柴田雅人