もちろん、この一戦にかける陣営の思い入れも強い。岩田騎手から優勝請負人としてバトンを受けたのは、三浦騎手。今季は英国(9月8日〜26日。20戦2勝)に渡り、今週に帰国。鞭(ムチ)の扱いによる騎乗停止など海外特有の制裁を受けたが、この武者修行により、技術的にも人間的にもひと回り大きくなって帰ってきたことは間違いない。彼の手綱さばきには、陣営はもとより、ファンの期待も高まる。
戴冠のチャンスは、春の高松宮記念にもあった。結果はローレルゲレイロの前に10着と後塵を拝したが、当時は「全体的に覇気がなかったし、ヤル気も薄れていた」と小林調教厩務員。一方、今回は「休み明けでも気持ちが前向きだし、闘争心が感じられる」と手応えを感じている。
その証拠に、1週前追い切り(24日、ポリトラック)は活気のある動きで、抜かりのない仕上がりをアピール。6F81秒4→65秒8→51秒3→37秒3→12秒4を馬なりでマークし、内のジャガーメイルに1/2馬身先着した。
「ここまで順調に乗り込み、体も息もできているので、疲れを残さないことに主眼を置いてやった」と小林調厩員。また、「年を重ね、いい意味でズブさが出てきた」とも。この馬の場合、有り余るスピードが“諸刃の剣”でもあった。折り合いに苦心し、スタミナを消耗するレースを繰り返してきた。
逆に、ズブいぐらいがちょうどいい。前半に脚をためて、直線で一気に爆発させる。陣営が思い描いてきたレースができれば、大願成就も夢ではない。「やれることはすべてやった。あとは運だけ」。小林調厩員は人事を尽くして天命を待っている。