その個人タイトルレースでは、9月7日現在、阿部慎之助捕手(巨人=33)が打率.317、打点83で2部門のトップに立っている。打率では2位の坂本勇人内野手(巨人=23)が.3104、3位のラスティングス・ミレッジ外野手(ヤクルト=27)が.3097と肉薄しており、最後まで分からない状況。しかし、打点は66で2位のウラディミール・バレンティン外野手(ヤクルト=28)に大差を付けており、こちらは当確といっていいだろう。
問題は本塁打王争いだ。現在のランキングは、1位・バレンティン27本、2位で阿部とトニ・ブランコ内野手(中日=31)が21本で並び、4位のミレッジが20本で続いている。こちらも、残り試合の少なさを考えると、阿部らが逆転するのは困難で、バレンティンの2年連続本塁打王が濃厚だ。
もし、20本台での本塁打王誕生となると、95年のパ・リーグの小久保裕紀(ダイエー)=28本=以来、セ・リーグでは61年の長嶋茂雄(巨人)=28本=以来の低レベルのタイトルホルダーとなるだけに、バレンティンにはせめてあと3本の上積みはして、30本台に乗せてほしいところ。
ただ、気になるのはバレンティンの打席数だ。セ・リーグの打率ランキングのどこを見ても、バレンティンの名は見当たらない。つまり、規定打席に達していないのだ。バレンティンは右臀部の肉離れで、8月2日に出場選手登録を抹消された。9月4日に復帰を果たしたものの、約1カ月間の欠場で、規定打席ははるか遠くに行ってしまった。
現在、バレンティンの打席数は318。ヤクルトの残り試合は26でシーズンの最終規定打席446までは、あと128打席が必要。これをクリアするには、1試合平均4.92打席立つ必要があり、クリーンアップを打っているバレンティンには現実的には不可能な数字だ。
バレンティンがタイトルを獲得すれば、2リーグ制となって以降、史上初の規定打席不足の本塁打王誕生という珍事となる。こんな事態を引き起こしてしまった、他のホームランバッターたちは情けない限りである。
(落合一郎)