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高橋四丁目の居酒屋万歩計(3) 「車屋」(くるまや、蕎麦屋)

 京王相模原線・南大沢駅から京王バスで帝京中高前から徒歩90歩

 山坂越えて谷越えて(本当)、さらに野猿街道などというそま人さえ行き来せぬ細道をたどり(ウソ)、やっとの思いで到着した「車家」の名刺に、蕎麦(そば)は身近な自然食。なのにあなたは、ちっとも身近ではありませんでした。ああ遠かった。くたびれた。
 都道20号線が通称野猿街道。多摩丘陵を貫く幹線を繋(つな)いでいるので、その交通量は半端ではない。ウワサの蕎麦屋は、その街道に面していた。
 帰路には笑い話になったのだけれど、そういうこともあろうかと思い八王子が実家だという女の子を仕込んでおいたのだったが、この子が乗るべきバスを間違えた。のちのち考えれば街道筋の、近接したバス停で降りて歩けばよかったのだが、ご破算で願いましてはということで、気分一新して南大沢駅から再出発して手間取った。多摩ニュータウンが、いかに広大であるか思い知らされる小一時間だった。
 案内人のはずだった女の子の言い訳も無理からぬことで、実家の父親の車で来訪していた。街道から店までの空間がすべて駐車場になっている。基本は車なのだ。平日の口開けゆえ、客は老夫婦が1組、のちに大家族が1組、それにわれわれ3人だけだった。庭で道祖神が笑っている。

 いかにも蕎麦屋という面構えの古民家は、明治7年築のものを昭和61年に福島県会津市から移築した。座敷の一間は、蕎麦っ食いの外国人と、ひざを傷めた蕎麦っ食いの高齢者用なのか板間で、テーブルと椅子(いす)の組み合わせになっている。
 多摩ビールという地ビールで乾杯。泡がこまやかでベルギー系の味わい。とろろ豆腐、だし巻き卵、ヒラスズキの洗い、自家製鴨ロースをいただく。酒は春鹿のお燗(かん)から緑の冷酒に切り替える。
 蒸篭(せいろ)はそれは見事な品でありました。聞けばその日の分だけを石臼で挽(ひ)いた生粉打ちとのことでした。
 そばつゆにも感じ入るものがありました。聞けば出汁(だし)と、かえしと、塩、それと湧き水
とのことでした。
 街道沿いに、マックや、サーティワンアイスクリームと同等の並び方をしている車家は、立ち居振舞いすべての点で鬼面人を驚かすことをせず、そしてそれは、徹頭徹尾ご亭主小川修氏の差配であろうと推察され、美味の上にもおさおさ油断のない配慮にいっそう深く感じ入ったのでありました。
 いかんせん遠いので定休日を付記。毎週水曜日、第3木曜日。

予算4500円
東京都八王子市越野3-10

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