4月17日のジャイアンツ戦、6番・中堅で出場すると、初打席でいきなりセンター前ヒットを放ち、チームに勢いを与えた。この日からカープは8連勝、一気に勝率も5割まで戻している。この間、殆どの試合でスタメンに名を連ね、クリーンナップにも座るなど、開幕直後に苦しんだチーム状態を上向きにした原動力とも言える。
ベテランの頼もしさはそれだけではない。
GW中、5月4日の巨人戦、9回に先頭バッターとして代打で登場すると、マツダスタジアムは一気に歓声に包まれた。古巣巨人との拮抗したゲームの終盤の打席だったが、左腕・中川の変化球に3度空振り、三振に終わる。だが、翌5日にも5回に代打でバッターボックスに立つと、フルカウントから巨人先発・山口の外の速球を捉えライト前へと運んだ。スタンドが大いに沸いたのは言うまでもなく、チャンスでは打てていなくとも、相手投手の右・左や試合状況に関わらず、あらゆる場面で起用されており、指揮官からの信頼の高さが窺える。
開幕直前、昨年までの主力が抜けたチームのキーマンとして緒方監督は長野の名前を挙げ、「どれだけやってくれるか楽しみ」と語り、4連覇への戦力として大きな期待を寄せていた。また、8連勝を達成した先月27日のヤクルト戦では自身今季初の決勝打を放っているが、「個人的なことよりチームが勝つことが大事」とコメント。淡々と語られた言葉からはベテランとして、さらに王者の一員としての貫禄が伝わってきた。
5月はここまで連敗が無く、首位巨人とのゲーム差も確実に縮めてきている広島カープ。長野自身も長年、バッティングの調子が上がってくるのは5月以降だ。新たな時代の幕が開け、チームも生まれ変わろうとしている中、ベテラン長野が本来の当たりを取り戻した時、いよいよ4連覇へ向けて王者らしい他を圧倒するチーム力が蘇ってくるのではないだろうか。
(佐藤文孝)