国内外のカジノ関係者約250人が見つめる中、初日19日のセミナー会場のパネルディスカッションに4人の国会議員が登壇した。
自民党カジノ・エンターテイメント検討小委員会で委員長を務める岩屋氏は「政治状況は流動的。自民、民主は天下分け目の戦いに入る。この戦いが終わるまではカジノを俎(そ)上に乗せるのは困難だが、終わったあとはしっかり乗せたい。風穴を開けられれば、成案を得るのはそう難しくないと思う」と話した。
東京都の石原慎太郎知事が“お台場カジノ構想”をぶち上げてから、はや10年。国政レベルで勉強会が開かれ、自民、民主でそれぞれ議連が立ち上がり、ようやく立法に向けた法案検討段階に入った。
しかしその作業は遅々として進まない。政治家はギャンブルの持つ負のイメージに腰が引けがちだし、ここ2〜3年、優先すべき政策課題が山積し、不安定な政権が続いていることも背景にあるだろう。
そんな中、合法化のタイミングを見計らう“詰め”の発言が飛び出した。カジノ誘致をもくろむ地方観光関係者は「岩屋さんは合法化に熱心だし、麻生新首相の側近だから期待している。総選挙が心配だけど(笑)」と目を輝かせた。
自民党からは同党カジノ議連事務局次長の伊藤忠彦衆院議員も出席。民主党の新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム(PT)からは、座長の古賀一成衆院議員、事務局長の牧義夫衆院議員が駆け付けた。この時期、自民、民主両党からカジノ合法化論議をリードする政治家がそろい踏みした意義は大きい。
古賀氏が「政治状況が許す時期になったとき、超党派の議連を立ち上げるチャンスだ」と気勢をあげれば、牧氏は「いよいよ正式なカウンターパートで話し合える。緊迫した情勢下のいま、東京でうろちょろしている議員はほかにいないんじゃないか。次の総選挙でよもやこの4人に間違いがあってはならない」とやって笑いを誘った。
カジノ研究に詳しい三井物産戦略研究所プロジェクトエンジニアリング室長の美原融氏は、同日夜のレセプションパーティーで「実質的にきょうが超党派議員連合のスタートだ。来年も同じ先生を呼んで法案の進み具合を検証しよう」とあいさつ。出席者から大きな拍手が沸き起こった。
そもそもカジノは、地方経済活性化や雇用創出につながる起爆剤とされる。議員の話にウソがなければ麻生政権でも小沢政権でも合法化は進む。景気刺激策を優先する麻生氏にとっては、中長期的な秘策ともなりうる。期待感は高まり、「来年、確実に法案が通ること」を祈念して乾杯した。
JGEは国内初の国際的カジノイベント。日本カジノスクール(東京・東中野)などが、国民のカジノへの理解と合法化に向けた啓もうを目的とし、アジア最大級の旅行産業展示会「世界旅行博」と同時開催した。
セミナーでは、MGMミラージュ社やメルコ・クラウン・エンターテイメント社、ラスベガス・サンズ社など世界を代表する大手カジノ運営企業5社の幹部がプレゼンテーションを行ったほか、専門家によるギャンブル依存症の研究報告、全国各地のカジノ誘致への取り組みなどが発表された。海外有力企業が顔をそろえたのは、合法化が近いとにらんだためだろう。
麻生氏か小沢氏か。解散総選挙に向け嵐が吹き荒れる中、カジノ関係者は台風一過のあとに期待している。
○合法化へのカギは?
岩屋氏はパネルディスカッションで「カジノの収益は国より地方財政に資することを主たる目的にすべき。東京の石原知事や大阪の太田房江前知事が旗を振ってきたが、ひところより声がない」と地方からの世論喚起を求めた。牧氏もまた「できる限り地方から声を上げていただくことに尽きる」と同意見だった。
本紙の直撃に岩屋氏は「東京五輪招致に一点集中したいのかもしれないが、石原知事流に『国会議員は仕事が遅くてけしからん!』とガツンとやってほしい」とニヤリ。
石原知事は国の法制化待ちという一歩引いたスタンスだが、言い出しっぺだけにかつての過激な物言いが期待されているようだ。
○海外企業の参加
旅行博には、メルコ、サンズのほか豪華カジノ客船のスタークルーズ社、2010年にシンガポールにカジノを開くリゾートワールド社もブースを出展。ルーレットやスロットマシンの模擬カジノのほか、ピエロのミュージカルなどカジノに欠かせないエンターテインメントの側面をアピールし、来場者を喜ばせた。