巨人が“マジックナンバーの点灯ウィーク”に入る。2位DeNAの勝敗に左右されるが、近く、カウントダウンが始まるのは確実。5年ぶりのリーグ優勝に向け、チームの雰囲気も良好である。
「巨人の優勝を前提に『MVP』が誰になるのか、予想する向きも出てきました。やはり、坂本(勇人=30)ですかね」(ベテラン記者)
シーズン中に最も活躍した選手に贈られる賞が、MVPだ。同賞は記者投票によって決められる。昨季は優勝チーム・広島から、現巨人の丸佳浩(30)が選ばれた。優勝チームの監督の気持ちを忖度するということは絶対にないが、マジックナンバーが点灯した後、記者団はフリートークの際、貢献度の高い選手の名前を聞き出そうとする。丸や坂本のようなレギュラー選手以外の名前が出ることも少なくないという。
「近年、中継ぎ投手の名前を挙げる監督も多いんです。『50試合以上投げてくれたから』とか、『シーズンを通してフル回転してくれた』と言って」(前出・同)
もっとも、巨人は「強い救援投手」を持たずにシーズンを迎えた。結果的に中川皓太をクローザーとし、勝ちパターンが作れたが、その中川もマジックナンバーの点灯を目前に“体調不良”を訴え、現在は途中加入のデラロサがそれを務めている。
こうした投手事情を見ると、特定のリリーバーの名前が原監督から出ることは考えにくいが、こんな声も聞かれた。
「原監督の第二次政権を支えたのは、昨年で引退した中継ぎの山口鉄也氏(現・ジャイアンツアカデミーコーチ)ですよ。9年連続60試合登板、プロ野球史上初となる200ホールドの達成…。こんなふうに献身的にチームのために連投してくれ、しっかりと試合終盤のピンチの場面を抑えてくれるピッチャーがいるのといないのとでは、大違い」
コーチ経験を持つプロ野球解説者がそう言う。
優勝監督が“MVPに推薦する”中継ぎ投手に対し、「もっと高く評価されてもいいのでは?」という動きも出始めたのだ。そのきっかけは、やはり、巨人の投手だった。シーズン序盤、上原浩治氏が引退を表明したのがきっかけだったという。
「上原氏は日米通算132勝、128セーブ、104ホールド。救援投手としても長く現役を続けたので、『100勝100セーブ100ホールド』なんて記録が達成されたんです。でも、名球会入りの規定には届いていませんよね?」(前出・プロ野球解説者)
今さらだが、名球会とはプロ野球のスター選手が「規定」をクリアし、入会が認められる組織だ。投手なら、「通算200勝、同250セーブ」、打者は「通算2000本安打」がその規定となっている。しかし、中継ぎ投手のチーム貢献度を表すホールドに関しては、入会規定には入っていない。中継ぎ投手の好不調がペナントレースの勝敗を大きく左右する現状からも、「ホールド」をもっと高く評価すべきではないか、と…。
名球会入りがプロ野球選手の栄誉の全てではないが、球界全体として、中継ぎ投手の苦労が報われるようにしていかなければならないはずだ。原監督が、中川、澤村、デラロサ、鍵谷、先発からリリーフに転向した田口、大竹らの苦労を口にしたとき、大きな進展が見られるかもしれない。(スポーツライター・飯山満)